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「亡くなった彼女の写真を隠しておいてこんなこと言たって信憑性ないのかもしれないけど……未知は彼女とは全然似てないよ」
「理一さん、それ前も……」
「うん。前にも言ったけど、未知は信じてくれてないんでしょ」
躊躇いがちに首を縦に振ると、理一さんが苦笑いのままに眉尻を下げた。
「未知と知り合うきっかけになったのは、マッチングアプリのプロフィール写真が彼女に似てたから。それに関しては何の言い訳もできないんだけど……。2回目のデートでおれが亡くなった彼女のことや理玖のことを打ち明けたとき、未知が俺に『優しいお父さんだ』って言ってくれたでしょ」
「そう、でしたっけ」
「うん。あのとき、おれは未知にもう会ってもらえなくなることを覚悟して、彼女のことや理玖のことを打ち明けた。絶対にびっくりしたはずだし、騙されたって罵ったって良かったのに、未知はおれのいろんな事情全部受け入れたうえで『優しい』って笑ってくれたんだよ。そんなこと言ってくれるこの子のほうがずっと優しいじゃないか、って思って。未知のこと、もっと知りたくなった」
私の頬をそっと撫でた理一さんが、とても愛おしそうな瞳で私を見つめてくる。
「写真は本当にただのきっかけに過ぎなくて、あの瞬間にはもう、おれの気持ちは未知に動いてたよ」
理一さんの綺麗なブラウンの瞳が、切なげに揺れる。間抜けな表情を浮かべてそこに映るのは、まぎれもなく私自身で。理一さんからプロポーズを受けたときに負けないくらい、左胸がキュンとした。
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