672人が本棚に入れています
本棚に追加
「それって、結構前のことじゃないですか……」
「だから言ってるでしょ。おれも未知のこと好きだ、って。未知と付き合ってるときも結婚してからも、未知を彼女の代わりにしたことなんてない」
「でも……」
「だって、未知は彼女とは全然違う。虫や水族館のサメまで何の躊躇いもなく触れちゃうし、美術館で静かに絵なんか見るよりもアクティブに体を動かせる場所に行くほうが好きだし、クレーンゲームのぬいぐるみなんかで高級アクセサリーでもプレゼントしたときみたいに喜んでくれるし、我慢しなくていいところばっかり我慢しちゃうし」
「理一さん、今言ってること全部、褒められてるのかバカにされてるのかわかりません」
「何言ってんの? 100パーセント誉め言葉しかないよ」
「そうですか?」
微妙そうに眉を寄せると、理一さんが目を細めてふふっと笑った。
「そうだよ。おれは、出会ってから今までで知った未知のこと、全部好き」
「どうしたんですか、急に……」
今までにないくらいにはっきりと理一さんから好意の言葉を告げられて、カーッと燃えるように頬が火照った。
動揺のあまりに、理一さんの顔を真っ直ぐに見られない。
うろうろと左右に視線を彷徨わせていると、理一さんが私の肩を抱き寄せて額にそっと口付けた。
最初のコメントを投稿しよう!