愛情のみせかた

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「未知が突然家から出て行って、連絡もつかなくて。今日ここに来る前から、ずっとドキドキしてた。このまま未知が離れていったらどうしよう、って」 「ごめんなさい……」  理一さんの鼓動の音に合わせて、私の左胸もドクドクといつもより早く脈打つ。  病院で《あの写真》を見たあとから、理一さんの言動が何もかも信じられなくなった。  出会ってから一緒に過ごしてきた時間の全てが、偽物だったのかもしれないと疑った。  だけど、私の手のひらの下に感じる鼓動は、確かに本物だと信じられる。 「理一さん、好きです」  理一さんの左胸に顔を寄せると、彼が私を抱きしめて耳元に囁いた。 「おれも、未知が好きだよ。一緒に家に帰ってくれる?」  少し自信なさげな彼の言葉に、ふっと息を漏らして笑いながら頷く。  ドクドクと鳴る理一さんの左胸の音を聞きながら、私は自分のお腹に手をあてた。
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