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「そうですね。よく見たら、そんなに似てないのかも」
冷静な声で言うと、理一さんが安堵したように表情を緩めた。
「だけど、私に気を遣って無理に忘れようとしなくたっていいですよ」
彼女の写真を見つめながらそう言うと、隣で理一さんの纏う空気が揺れた。
「だって、彼女は理玖のママで。彼女と理一さんが想い合った時間があったからこそ、私は理一さんと理玖に会えたんだから。私への好意とは別にして、理一さんが今でも彼女の存在を大切に想ってることには変わりないでしょ?」
「未知……」
「出会ったばかりの頃、私はそれを知っていて、そのうえであなたのそばにいると決めました。だから、もう大丈夫。これからは、ちゃんと彼女に見ててもらいましょう。理一さんと理玖が、どんなふうに日々を過ごしているか」
私はもう、理一さんのそばから逃げ出さない。
強い意志を持って笑いかけると、泣きそうに顔をゆがめた理一さんが私の手をとった。
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