エピローグ

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 出産後の退院の日。理一さんが病院まで車で迎えに来てくれた。  生まれて数日の小さな娘は、おくるみに包まれて、私の腕の中ですやすやと眠っている。  生まれてから今日まで何度も抱き上げたけれど、首の座っていない小さくてふにゃふにゃの新生児を抱くのにまだ慣れない。  理玖のときの経験がある理一さんも、「こんなに小さかったかな」と生まれた娘を嬉しそうに不慣れな手付きで抱いていた。  理一さんと娘と3人で家に帰ると、私の母と一緒に留守番をしていた理玖が玄関まで走り出てきた。 「パパ、おかーさん! ミクちゃんは?」  理玖が、私が抱いている赤ちゃんを見ようとぴょんぴょん跳ねる。 「ただいま。今、寝てるよ」  目線の高さまで屈んで見せてやると、理玖が娘を見てぱーっと嬉しそうに目を輝かせた。  生まれてすぐにお見舞いに来てくれた理玖と娘が対面するのはこれが2回目だ。と言っても、1度目の対面は病院のガラス越しだったから、理玖に妹を間近で会わせるのは初めてだ。 「さわっていい?」 「うん、いいよ」  笑って頷くと、理玖は恐る恐る娘の小さな手に触れた。新生児反射で、娘の手が理玖の指先をぎゅっと握る。
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