オトナ

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 僕は光の中で生きていた。大人は正しい、故に完璧だ。そんな大人に囲まれ て生きてきた。大人が言うから勉強したし、大人が言うから大学に進学した。 僕は大人が言うから子どものままでいた。明るい社会(せかい)だった。  僕に同い年の彼女ができた。  ある日、親が喧嘩をしていた。喧嘩は母親が父親を焼肉に誘わなかったこと が原因らしい。かなり罵倒しあっていた。僕は罵倒されまくった母を慰めた。  ある日、テレビで芸能人の不倫について大人がとやかく言っていた。かなり どうでもよかった。  ある日、Club Houseでどこかの社長がマウントを取りまくり承認欲求を死 に物狂いで満たしていた。かなり哀れだった。  19歳のある日、目覚めたように気付いた。 「僕はこのまま20歳になって大人になるけど大人になれない。」 「この世に大人なんて存在していなかった。」 「僕は子どもしかいない不安と不完全さに満ちた暗い社会(せかい)を生き ていかなければいけない」この気づきは絶望のスパイスが効いた安堵の味がし た。  でも彼女と2人なら生きていける気がした。それと同時に人間の本質はここ にあると知った。
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