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地底人の案内
「いやあ、ここってたまに廃墟ツアーとかやってる人来るでしょ。
地震もひどかったし、もしかしたらと思ってきてみたんですよ。
そしたら、案の定あなたたちがいてね。見に来てよかったですよ。
ここは地下だから携帯電話の電波も入らないし」
禿げ頭を光らせながら前を歩く男について三浦と森本は歩く。
森本がそっと三浦の耳元でささやいた。
「どう思う」
「なにが。てか、近寄るなよ」
「あの人、頭が光るなんておかしいだろ」
「だから離れろよ。禿なんだから頭くらい光るだろ」
「光らねえよ!」
たまらず、叫んだ森本。
前を歩く男が振り向いた。
「そうですね。禿げ頭でも普通は暗闇の中で光ることはないです。
あなたたちの常識なら」
男が友好的に笑った。気がした。
二人には禿げ頭がまぶしすぎて、その表情を見ることはできなかった。
「実はね。私は地底人なんです。
歩きながら話しましょう」
そう言って、男は話を始めた。
男は地底での生活に適応した人間らしい。
暗闇での生活で困らないように頭が光って周りが見えるように進化したのだという。
また、地下で生活しやすいように体が小柄で手足も短くなっている。
もしかしたら、サルから進化した三浦たちとは違い、モグラから進化したのが地底人なのかもしれない。
そんなことを、男は楽しそうに語った。
「人種差別とかの問題もあるんで、政府には私たちの存在は秘匿してもらってるんですよ。
なんで、あなたたちが戻るのにも政府との交渉とか調整とかで一週間くらいかかっちゃっうんで。
その間は、私たちの集落で一緒に生活してもらうことになるんですけど、我慢してくださいね」
三浦にしろ、森本にしろ、文句を言える立場にはない。
「あの、すいません。こっちの森本が失礼なこと言っちゃって」
「気にしないでください。警戒心は大切ですから」
三浦が謝る様子を見ながら、森本がきまり悪そうに頭を下げた。
助けてくれた人間に対して、確かに失礼な態度だった。
それに、森本としては三浦とのにゃんにゃんを邪魔された逆恨みの感情もあるので少し複雑でもある。
「そうだ。ここからは足元が暗いので、私のズボンをずりおろしてくれますか」
「こうですか?」
「はい。それで、股間のところに二つ玉がついてるのでそれをもいでください」
「おお!すごい!この玉、金色に光ってる」
「これも暗闇に適合した進化ですね。
ただ、手足が短いので自分たちではもげないんですよね」
金の玉で足元を照らして喜ぶ三浦と、照れくさそうに笑う地底人。
森本は深く考えるのをやめた。
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