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緊急事象の警戒が解かれ、
戻ってきたポチが解析を始める。
命令もしていないのに、
実に優秀な助手だ。
「03、ゴ無事デスカ?
少シ前ニ僅カナ感情ノ起伏ガ
記録サレテイマシタガ。」
「…ああ、問題ない。さっきの戦闘記録と、
解析データが纏まったら本部に回してくれ。」
「了解シマシタ。」
後部座席に乗っている少女はうつむき気味で、
ここからでは表情がよく見えない。
少しでも落ち着きを取り戻してくれていればいいが…
「優秀な貴方が何故RAZEにこだわるのか、
理解できないんだけど。」
「なんでも金で思い通りにいくと思ったら、
大間違いだぜ、お嬢様。」
「最新式の装備に興味はない?
今度のは言葉のコミュニケーションを
必要としない。思考と直接リンクしていて、
考えた瞬間に作戦行動に移行できる。」
「それじゃセーフティはどうなってるんだ?」
「興味あるみたいね♪ それも即断即決。
良いも悪いも線引きは既にしてあるんだから、
いちいちアレやっていいか?コレやっていいか?
なんてやり取りは全くもってナンセンスよ。」
「味があるって言ってもらいたいな。
俺はそんなバディ感の無い相棒はゴメンだね。」
「いつかそのタイムラグが
命取りになる、とは思わない?」
「………。」
「悪いことは言わないからさ、
早くこちら側へ来て♪」
「アンタが求めているのは俺じゃなくて、
ベクター弾の情報だろ?」
「誓って貴方にそんな企業スパイの
真似事なんてさせない。
アンプラグド代表の言葉が信じられない?」
「…邪険にして悪かった、
素晴らしいオファーには違いない。
よく考えて返事させてもらうよ。」
「仕方ないなぁ♪ 今日は出直す事にする。
その代わりって言ったらなんだけど、
研究開発の為にこの子は貰っていくよー☆」
「ポチ。」
「ハイ、解析終了。データ転送完了。
サンプル回収モ終エテイマス。」
「ミュゼ、現時刻を以てこの件を
アンプラグドに委譲する。
全部だ、綺麗に片してってくれよ。」
パキ…
「えー、ちょっと待って頭ぐちゃぐちゃじゃん。
話が違うんだけど〜!?」
「狙いは正確だったが詰めが甘かったな。
今回は実弾銃の勝ちだ。」
「じゃあ何?討伐報酬も無しって事じゃん!」
パキッ…パキパキ
「! …ちょっと静かにしてくれ。」
「何?用が済んだらとっとと帰れっての?
それって酷くない!?」
「いいから、黙ってこっちに来るんだ!」
「な、何よ??」
少し強引にこのじゃじゃ馬を引き寄せる。
気のせいならただのラブロマンスで済むが、
今、確かに…!
「緊急事象ノ発生ヲ確認!」
「えっ、怪異は倒したじゃない…
どうして、もう一体いるの…!?」
「…ポチ、間違いないのか!?」
「ハイ、2時ノ方向、150m先デス。
トレースヲ開始シマス。」
遠くにある赤い光点がひとつ消えた。
怪異が二体同時に発生するなんて、
今までになかった事象だ。
…何が起きてる!?
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