リスクファクター

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普通なら跳弾させればさせるほど、 威力は落ちるもんだが… 建物の材質などのデータとリンクさせて 跳弾する角度や回数を調整すれば、 対象物に初速よりも高速、高威力で 着弾させる事も可能になる。 「カウント3デ発砲後、次弾装填。  第2射ニ備エテクダサイ。  カウントダウン開始、3、2、1、FIRE!」 放たれた弾丸はサイレンサーを抜けて 滑るように通風孔に吸い込まれ、 跳弾を繰り返して対象者に接近していく。 「機械ノ私ガ言ウノモ変デスガ、  奇妙ナ技ヲ使イマスネ。」 「だから生業にできてんのさ、着弾判定は?」 「イレギュラー発生。着弾箇所ハ右上腕部。」 「いや待て、成功率ほぼ9割が外れるのか?」 「不確定要素ガ有ル、ト言イマシタガ。」 「ああ、じゃあ質問を変える。状況は?」 「弾道ヲ塞グヨウニ、投擲サレタ物体有リ。」 「成分ハ長石、ケイ石ナド石質原料ガ約50%、  粘土質原料ガ約50%、微量ノ鉄分ヤ有機物ヲ  含有シテイマス。」 「チッ…投げられた花瓶か置物ってとこか。」 「対象者、負傷ト同時ニ更ニ活性化。  ベクター弾ノ使用ヲ推奨。」 「…アレはあまり使いたくないんだがな。」 「背ニ腹ハ変エラレマセン。」 「じゃあ、今度は外せないな…  上の連中に3点バーストの許可を。」 「1発1発ガ高額ノ為、不許可デス。」 「ダメ元で申請くらいしろよ…」 ベクター弾。 怪異化が止まらなくなった対象者に 生体活動を阻害する物質を直接送り込む物で、 強制的に細胞の自死、アポトーシスを誘発させる。 文字通り、特務機関RAZEの一撃必殺の特殊弾だ。 残念な事にコストが高いのが玉に瑕で、 さっきの3連射が許可されなかったのも 慢性的に不足している予算が原因だろう。 世界の危機に立ち向かう特務機関に、 有能なスポンサーがつく事を願ってやまない。 そして後の処理も最悪だ。 特殊弾によるアポトーシスは全身に及ぶ為、 泥をぶちまけたように対象者は崩壊を起こす。 崩壊したゲル状の物体は特に害は無いが、 グロい、とにかくグロい。 これなら銃撃戦で穴だらけになった 死体のほうがはるかにマシだろう。 職場環境の改善を申請したいところだ。
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