リスクファクター

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08474de1-7499-4df3-9d14-abe4ae8a2a1d マーカーとは。 三角錐形分子構造を模した物で、 その頂点にあたる部分に点光源となる 赤いLEDが仕込んである。 コイツを踏みつけるとその構造が壊れ、 80dBくらいのデカい音を立てる。 戸建ての庭に撒く防犯砂利のような物を イメージしてくれればいい。 降雨により音がかき消されてしまっても、 点光源が潰される事で目で追えるってワケだ。 「ポチ、ライトを消してくれ。  俺の準備が整ったら、  この子を乗せたまま車を後退させろ。」 俺はベクター弾が装填された銃を コンシールドホルスターに差し込むと、 ダッシュボードに忍ばせておいた銃には 先端が空洞になっている弾丸を込める。 「03、ホローポイント弾ハ現在、  国際法デ使用ガ禁ジラレテイマス。」 「それは人に対して、だろ?  フルメタルジャケットじゃ貫通力はあっても  ストッピングパワーが足りない。」 「怪異化シテシマッタ対象者ニ  通常弾ガ有効ダトハ思エマセン。  作戦ノ再考ヲ提案シマス。」 「これは保険だよ。ベクター弾1発じゃ、  さすがに心許ないんでな。」 パキ…パキッ… フロントガラスごしに見えていた 点光源のいくつかが消えた。 集音マイクが潰されたマーカーの音を拾い始める。 「…おいでなすったな。  暗視カメラを最大にしてフォロー頼む。」 「え、一緒に逃げればいいじゃない。  なんで…ここに残るの…?」 「誰かがやらなきゃ安心して  ベッドで眠れないだろ、それだけの事さ。」 不安そうな少女を乗せた車が、 暗闇の中をスムーズに後退していく。 俺はそれを見届けると無数にばら撒かれた マーカー群に足を踏み入れて、 アイソセレススタンスに銃を構える。 構え方は我流も含めていくつかあるが 左右への撃ち分けに差が出にくく、 正面に対して幅広く対応できるこの体勢が 今はベストだと言えるだろう。 12時方向にあった点光源がひとつ、 またひとつと潰されていく。 怪異は潜むことなく真っ直ぐに こちらに向かって距離を詰めてくる。 面倒な事に品行方正だった奴ほど より凶暴性が増すらしい。 牙を剥き出しにしたような強烈な敵意が、 こちらにはっきりと向けられている。 まだだ…もっと引きつけて…!
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