北陸本線(短編)

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 長髪の男性は、いかにも頭が良さそうに見えた。彼に質問してみた。 「何となくなんですけど、研究者っぽい雰囲気を感じるんですけど、当たってますか?」 「京大の大学院で植物学を研究してます」 「そんな気がしました」 「あなたは、僕と同じくらいの年齢ですか?」 「同じくらいって、二十五歳くらいでしょうか?」 「そうです」 「いえ、まだ二十一歳です、でもよくそう言われます。年上に見られるのは嬉しいです」 「君も何かを研究してるって感じがするよ」 「それもよく言われます。マッド・サイエンティスト」  坊主頭の男の子がはにかみ、女の子がケラケラと笑った。  僕は図に乗って、高校時代のエピソードを話した。 「高校の課内クラブで『化学部』というのに入って居たんですけど」 「ふむ、似合うね『化学部』。いかにも怪しいものを作りそうだ」 「その通りでして。ある時『香水を作ろう』というテーマがありまして」 「香水って、女の人が付けるような?」 「まあそうなんですが、色々なオイルをアルコールに溶くんです。オレンジオイルとかミントオイルとか、どっちかというと食品系の香りが多かったです」 「ほう」
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