北陸本線(短編)

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「その中に『ジャスミン』の香りがありまして」 「それは食品じゃないね」 「それにオレンジオイルを混ぜたら強烈なものが出来ました」 「出来るだろうね」 「でもそれを捨てるのがもったいなくて」 「捨てなかったの?」 「教室にバラまきました」 「それは迷惑というか、やっぱり君、マッドサイエンティストだよ」  坊主頭と女の子が声を出して笑った。  坊主頭は若そうに見えた。高校生くらいかもしれない。女の子は、ちょっと分からない。私と同じくらいだと思う。  ユースホステルの夜は早い。九時、消灯の時間となって、私たちは男女別の宿泊室へ引き上げた。  固いベッドに潜り込むと、どーん、と、荒波が低い衝撃音を立てているのが聞こえた。  繰り返す大波。消波ブロックを少しずつ浸食していく。  それは子守唄というより、何かの戒めに聞こえた。  翌朝、食堂で朝食を食べながら、僕たちは各々の行程を披露しあった。  坊主頭と植物学研究者は、富山市街を観るためもう一泊するという。  女の子は列車で移動。彼女は富山駅から北陸本線の上りに乗るといった。  僕も北陸本線の上りに乗るので、一緒に宿を出た。
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