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「そうですか。僕も最終日なんです。糸魚川の先の直江津というところまで行って、そこから長野を通って、千葉の自宅に戻ります」
「途中まで一緒ですね」
「お、いい列車が来ましたよ」
「何がいいんですか?」
「四一九系と言います。昔、寝台特急だった車両を普通列車用に改造したもので、揺れが少なく、座席がゆったりしています」
とはいえ、顔は無理矢理改造されたような食パンに窓を付けたような表情で、お世辞にも格好いいとはいえない車両であった。
僕らは屋根の高い車両に乗り込んだ。屋根が高いのはかつて寝台設備を有していた名残だ。
ほどなく列車は動き出した。
「ふーん、寝台特急かあ。あたし乗ったことないです」
「いいものですよ。寝台特急というのは値段は高いけど、夜の匂いが満ちていて魅力的です」
「二十一歳でしたっけ?渋い趣味ですね」
「・・・まあそうかもしれません」
「遠くまで電車に乗ったのって、この旅行が初めてなんです」
「そうなんだ」
「お父さんの車で出かけたことしかなかったから」
「ふむ。色々新鮮かもしれない」
「それに私、一人旅って初めてなんです」
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