2人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなんですか?旅慣れているように見えました」
「そんなことないですよ、どきどきしてます」
「それは気づかなかった」
「実は私、病気していたんです」
「病気?」
「はい。それでずっと入院してて。あまり外のこと知らないんです」
「そんなに長い入院だったんですか?」
「ええ。だから、こうして一人旅なんかに出るの、楽しくて仕方ないんです」
「そうだろうね、入院したことのない僕でさえ、楽しくて仕方ないですから」
北陸本線は朝のラッシュを少し過ぎて、空いていた。
僕らはソファのような大きな座席に向かい合って座り、車窓を眺めながら話した。
車窓を眺めていないと、目が合ってしまって気恥ずかしいということも、あったと思う。
富山市街はすぐに途切れ、枯れた風景が広がっていた。
「入院してる間はね、年下の子供達とお友達になったり、そんなことが楽しみでした」
「子供達も入院していたんだ」
「あたし幼稚園って行ってないし、小学校にもあまり行けなかった」
「そうだったんだ。辛いね」
「中学になって少し良くなったけど、でも、院内学級っていって、病院の中で授業を受けたの」
最初のコメントを投稿しよう!