#2 恋から逃げられない(腐女子×バイ)

2/8
前へ
/261ページ
次へ
☆ プレゼンの日、私は準備が足りずバタバタしていた。 「池中さん、お待たせしました!」 「いいえ、行きましょう」 はわわ~、イケメンの笑顔、癒される~。 大きな背中を追いかけて歩く、ああ、その背中にひっかき傷とかないかなあ……はっ、ダメよ、そんなふしだらな事考えちゃ! 大きな手の長い指がエレベーターを呼ぶボタンを押す、ああ、その指で大山くんをひんひん言わせてるんだろうなあ……はっ、待って! 私、勝手に池中さんをタチだと思ってるけど、実はネコなんじゃ!? きゃあ、それはそれで妄想を掻き立て……いやいや、今は駄目だ! あとでゆっくり考えよう! 軽快な音を立ててやってきたエレベーターに池中さんはするりと乗り込み、開くのボタンを押して待つ。 「あ、ごめんなさい……」 思わず謝ると、池中さんが「ん?」と首を傾げる、いや、色っぽ過ぎるから!  「あ、いえ……そういうのは、私の役目だと思って……すみません」 言うと池中さんはにこりと微笑む、ぐはぁ、イケメンの笑顔は凶器だ! 心臓、止まる! 「エレベーターのドアを開けて待つってこと? そんなの女性の仕事とか思ってないし、俺の方が後輩になるんだから、俺の仕事な気がするけどね」 言いながら5階のボタンを押す、5階がプレゼンルームだ。自社ビルの最上階である。 「まあそうですけど……池中さんの方が年上でもありますし」 「ああ、そうか、それで敬語か。いや、そんなの気にしないで。俺の方が教わること多いんだし」 「あはは、でももう、池中さんのほうがお仕事できてる気がします」 さすがは中途で社長が一目惚れしただけのことはある。事務機器の販売だけれど、確実に販売実績は積み重ねている。弁も立つし、知識も豊富なのが勝因だろう。今日もプレゼンは私だけど、補助のはずの池中さんにさっさと交代してしまうと思う。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加