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☆
プレゼンの日、私は準備が足りずバタバタしていた。
「池中さん、お待たせしました!」
「いいえ、行きましょう」
はわわ~、イケメンの笑顔、癒される~。
大きな背中を追いかけて歩く、ああ、その背中にひっかき傷とかないかなあ……はっ、ダメよ、そんなふしだらな事考えちゃ!
大きな手の長い指がエレベーターを呼ぶボタンを押す、ああ、その指で大山くんをひんひん言わせてるんだろうなあ……はっ、待って! 私、勝手に池中さんをタチだと思ってるけど、実はネコなんじゃ!? きゃあ、それはそれで妄想を掻き立て……いやいや、今は駄目だ! あとでゆっくり考えよう!
軽快な音を立ててやってきたエレベーターに池中さんはするりと乗り込み、開くのボタンを押して待つ。
「あ、ごめんなさい……」
思わず謝ると、池中さんが「ん?」と首を傾げる、いや、色っぽ過ぎるから!
「あ、いえ……そういうのは、私の役目だと思って……すみません」
言うと池中さんはにこりと微笑む、ぐはぁ、イケメンの笑顔は凶器だ! 心臓、止まる!
「エレベーターのドアを開けて待つってこと? そんなの女性の仕事とか思ってないし、俺の方が後輩になるんだから、俺の仕事な気がするけどね」
言いながら5階のボタンを押す、5階がプレゼンルームだ。自社ビルの最上階である。
「まあそうですけど……池中さんの方が年上でもありますし」
「ああ、そうか、それで敬語か。いや、そんなの気にしないで。俺の方が教わること多いんだし」
「あはは、でももう、池中さんのほうがお仕事できてる気がします」
さすがは中途で社長が一目惚れしただけのことはある。事務機器の販売だけれど、確実に販売実績は積み重ねている。弁も立つし、知識も豊富なのが勝因だろう。今日もプレゼンは私だけど、補助のはずの池中さんにさっさと交代してしまうと思う。
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