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「そんな事ない、今でもひとりじゃ不安だ。八代さんはじめ、まだまだ諸先輩方に勉強させてもらわないと」
そんなことを、あっさり言いますかあー!? かっこよくて強気なくせに、ほろりと見せる弱さ、最強です!
はあ、と思わずため息が漏れた。
「そんな、呆れないでよ」
「やだ、ごめんなさい、呆れたわけじゃ」
言った瞬間だった、突然真っ暗になった。
「え!?」
「わっ」
がくん、と衝撃もあって、エレベーターが止まる。
「嘘! なんで!?」
「地震でもあったのか、でも照明まで落ちるって」
僅かな明かりもない暗闇は迫ってくるようで怖い、手を伸ばせば届くところにいるはずの池中さんでさえいなくなってしまう気がする。
「池中さーんっ」
思わず呼んだ、泣き声が混じる。
「大丈夫」
力強い声がして頭に手がかかり引き寄せられる、ぼすんと温かいものに当たる、池中さんの体だ。そして抱き締められた。
「全く、非常用に蓄電もしてないのか」
言いながらごそごそとしている雰囲気、そして光が灯る、池中さんの手に握られたスマートフォンの画面の明かりだ。
「エレベーターがここまで完璧に電源消失するって、危機管理がなってない」
ぶつぶつ言いながらスマートフォンを私を抱き締める方の手に持ち替え、ボタンパネルの『非常』と書かれたボタンを押した。
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