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『はい、警備室』
「エレベーターに閉じ込められました、何があったんですか?」
『全館で停電してます、原因は判らなくて……3号機ですね、すぐに助けに行きます』
「お願いします」
通話が終わると天井から僅かな光が戻った、もう停電は解消されたのか、と上を見たけれど、点いたのは小さな非常灯だけだった。まだ回復しきっていないと判るのはボタンパネルを見ても明らかだ。
「あ、ごめんなさい」
私は慌てて離れた、その細く引き締まった素敵な腰に腕を回して堪能してしまっていた……ああ、停電に感謝! こんなラッキーないわー。
「どれくらいで来るかな。とりあえず、そこ座ってなよ」
そう言って池中さんは角を指さした、そこには万が一エレベーターが止まってしまった時用のグッズがいろいろ入っているんだ、懐中電灯とか、ポータブルのトイレとか……それは使わずに済みますように! それらが入った入れ物は椅子になる、ずっと立っているのも大変だという配慮だろう。
「え、いいですよ」
「女の子が遠慮しない」
言って私の肩に手をかけ支えにして、その容器を引き寄せた。
いや、待て待て、お手て、あったかいし、ふわりと来る香り、良すぎるし、肩とか腕とか、ああ、もうどこもかしこも無駄にかっこいいな!
「ほら、座って」
「ありがとうございます、でも疲れたらにしますね」
私は笑顔で断った、だってフレアスカートは膝丈だ、こんな高さのものに座ったら、ちょっと見えそうで嫌だ。女子同士ならまだしも、こんなイケメンの前で足は晒したくない。
「停電はビルだけなのか? このあたり一帯ならなにか情報が上がっているか」
なんて言いながら、スマホをいじり始める、電話でもしようというのだろうか──はわわ! その明かりに映し出される顔に、見惚れてしまう。
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