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性格も温和そう。自分の容姿など気にしていなさそうな可愛い笑顔で話している、ううん、概ね話しかけられて相槌を打っているだけだ。
知らぬ間に見つめていたらしい、不意にばっちり目が合って、更に見入っていた、だって、その瞳がとても綺麗な緑色だったから──まるで宝石のよう。
その瞳が笑顔の形になったので、初めてはっと気づいて目をそらした。
絶対失礼な奴だと思われた、にこりともしないでガン見だったもの。
でも笑顔で返してくれるなんて、やっぱ出来がいいのだろう。
照れ隠しにオレンジジュースを飲んで、ポテトフライをつまんで、懲りずにもう一度、盗み見るように彼を見ると。
すぐに目が合った、彼は嫌な顔もしないで優しく微笑んでくれる。
それまでほかの人に見せていた笑みとは違う、と思ったのは思い上がりかしら。
☆
二軒目はカラオケに行った。
既に酔っぱらいの集団だ、盛り上がる曲を選び、うまく歌おうなんて思わずに合唱している。
そんな中、彼はずっとウーロン茶を飲んでいた。
「なんや、飲まんかい!」
平田先輩が迫る。
「バイクなの。捕まったらシャレならないよ」
岩崎先輩はのんびりと断る、スーツだしヘルメットも持ってないけど……ヘルメットはバイクに置けるか。
「タクシーで帰ったらええやないのぅ」
「もう、あの山奥の不便さを知らないから。明日、またタクシーで学校行くなんて、お金の無駄でしょ」
「知っとんで、運転手付きの車があるやろ! 第一いつまで山籠もりしとるの!? はよ都会に住んだらええのに! マンションもあるやろ!」
「あそこにいるからいいの」
彼はやんわり制して、部屋を出た。トイレかな?
暫くして、ドアが開き人が入ってくる気配はした、私は先輩が歌うのに手拍子を合わせていて気にもしなかったけれど。
「隣、いい?」
言われて「はい」と言いながら横を見て驚いた、岩崎先輩だった!
「新入生だよね。関東の人?」
開口一番聞かれた。
「あ、はいっ! 東京の八王子ですっ!」
緊張して声が上ずる。
だって。ひたすら勉強一筋だった。男慣れははっきり言ってしてない、その上いきなりこのイケメン⁉︎ 心臓に悪……!
「八王子か、いいとこだね」
「田舎ですけどっ……って、岩崎先輩も東京の方ですか?」
喋るのは、いわゆる関西弁ではなかった。
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