#3 恋に落ちよう(恋愛初心者×御曹司)※金銀スピンオフ

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「うちは会話も多くなかったです」 子供の頃から、鈍臭い私はみそっかすだった。 「ああ、姉とは子供の頃は時々口喧嘩しましたけど」 お菓子を取ったとかならまだいい、うるさいから静かにしろとかも言われたのは、傷ついた。 「同性だとそうかもね。僕もすぐ下の弟とはよく喧嘩するよ。喧嘩と言ってもやられっぱなしだけど」 「先輩、優しそうですもん、そんな感じがします」 と、そこへ、 「岩崎ぃ!」 四年の男子が雪崩れ込んできた! 「なんや、早速口説いてんのかい! 珍しいな、身持ちの硬いお前が」 「久々に関東弁を聞きたかったんだよ」 ふーん、そうか……っていうか、見た目で出身地なんか判る? 酔っ払いに絡まれたからか、先輩は男子を引っ張りながら立ち上がった。 「あ、お名前、聞いてもいい?」 長身をかがめて聞かれた、上から降る優しい声色に、私はどきっとする。 「月岡香織(つきおか・かおり)です……」 「月が香るか。なかなか風流な名前だね」 彼は微笑んで言った、風流? そんなこと初めて言われた。 「香織さん」 去り際に囁く様に言われた、名前で呼び……! 急激に顔に熱を感じる! 「は、はい」 喉の奥で返事をすると、彼はもっと深く微笑んだ。 「またね」 「はい」 思わず、そう返事をしてしまったけれど、また? またって? 男子学生と離れていく先輩に聞くこともできるわけもなく。 その後は、私は岩崎先輩の姿を、もう視界に収めることができなかった。
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