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4月1日、初出勤の日。
JR石川町駅から徒歩5分ほど、バス通りを渡った先にその立派な建物が見えてくる。
星林栄和学院は、幼稚園から大学院までを有する私立の学校法人だ。
その学舎はこの一帯に点在しているが、目の前の一方通行の道の左右にある学校は向かって右は中等部、左が高等部である。今回私が採用されたのは高等部だけれど中等部への異動もある、中学と高校の教員免許が必須ということはそういうことだ。
信号を渡り始めると、ワンブロック行った先の歩道を右から左に渡った青年がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。
ふわー、イケメンだー! ジャニーズ系とでもいうのか……ううん、それすら凌駕する異次元の美形だわ。
癖毛が印象的だ、長身で細身で、モデルさんでもやっているのだろうかと見惚れていると、彼は体の向きを変えた、えっ、高等部へ入って行く! ジーンズなんぞ履いているけれど、学生なら春休みと言えども制服だよね! 同業者かな! やだ! ラッキーじゃん! こんな美形がいる職場なんて! そして私の将来設計、こんな美形となら、むふふっ。
私は足を速めてその後を追いかけた、すると頭上から声がする。
「岩崎! お前はもう、通用口から入ってこい!」
正門を入ると大きな階段がある、この学校は2階に正面玄関がありそこへ繋がる階段だ、その中ほどに背広姿の中年の男性が立っていた。
「細けえな。こっちの方が近いんだからいいだろ、他の先生もこっち使ってるの見たことあるし」
青年が口答えをすると、中年の男性はガハハと大きな声で笑った。
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