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「でも基本は通用口だ、覚えておけ! しかもなんだその恰好は~、学生気分が抜けないやつだな! いやいや、しかし昔は手を付けられなかったやつがこうして教員として戻ってくるなんて、教師冥利に尽きるってもんだな!」
言いながら軽やかに階段を降りてくる。
「鳴海のお陰で教員になった覚えはない」
彼は不機嫌に答えた、そっか卒業生なんだな。
「あはは! 変わらないな! 上山は元気か!」
中年男性は嬉しそうに聞いた。
「とうの昔に上山じゃありません」
青年が面倒そうに答えると、男性はまた大きな声で笑う。
「大体なんで1日から登校なんだよ、学校は7日始まりだろ」
「本当に学生気分が抜けないやつだな、教師ってのは授業以外にやることがあるんだよ」
ニコニコ笑いながら青年の肩を叩いてから私の存在に気付いた。
私は深々と会釈して挨拶する、やばい、私も通用口だったんだ。
「羽村榮子先生ですね、社会科の鳴海です」
先ほどのガハガハ笑っていた様子とは違い、真面目に挨拶をしてくれた。
「はい、羽村です、よろしくお願いいたします」
「中野先生はもういらしてます、校長室へ──岩崎、案内してやれよ」
言われて青年はぶっきらぼうに「判ってるよ」と答えて歩き出す、鳴海先生は校門の外へ走って出て行ってしまった。
「あの、岩﨑さん、も、新任教員なんですね、同僚になります、よろしくお願いします」
名前はさっき鳴海先生が呼んだのをインプットした、けれど返事は「はい」だけで笑顔もなく、慣れ慣れしくするなというオーラすら感じる、うーん、気難しい人なのかな、顔に似合わず冷たいな。イケメンだから理想が高いのかな、私なんぞは口をきく価値もないとか……いやいや、私は負けない!
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