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「あの、えっと鳴海先生と親しいんですね」
なんとか話題を探した。
「ムカつくだけです」
こちらも見ずの答えに、なぜムカつくのとか、そういうのも話したくないのだとわかった。
一足式の校内に入り、私は内部構造も判らないまままっすぐ行こうとすると、
「3階です」
言って彼は踵を返すように体を反転させる、昇降口のすぐ脇に階段があった、そこを上がっていく。
迷路だとは言わないけれど、不慣れな道に戸惑いつつも彼の一歩後ろを歩きついて行く。
突き当りは事務室と書かれた部屋だった、そこを右に曲がると職員室、さらに右に折れ最初に目についたのは会議室と、その向かいに校長室はあった。
岩﨑さんが校長室のドアをノックする、はいという返事を待ってから岩崎さんはドアを開けた。
「ああ、岩﨑くん」
中には男性が3人、奥でこちらに向かっている椅子に座っているのは校長先生だろう。
そしてその前に立っているふたりの男性の内、若い方は私たちの同じ新任の「中野先生」だと分かった。そして立っているもうひとりが笑顔で私たちを迎い入れてくれる。
「よく来てくれました」
「お声をかけてくださりありがとうございます」
先ほどの鳴海先生とは180度違う態度と声音で、深々と頭を垂れて挨拶をした。
「こちらこそ引き受けてくださり感謝します。羽村さんも、ようこそお越しくださいました。教頭の飯島といいます」
やんわりとした物腰に、私も深く頭を下げる。
「羽村榮子です、よろしくお願いします!」
言うと校長先生は立ち上がり挨拶をしてくれた、そして新任3人も自己紹介をする。
「社会、高校では特に地理を受け持つ、中野弘毅です!」
「音楽科担当の羽村榮子です」
「──英語の、岩崎真歩です」
皆新卒での採用だと校長から補足があった、そして職員室に移動する。そこには教員が揃っているようだった。先ほどの鳴海先生の話のように、4月1日から出勤なんだ。
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