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「言いふらさないでね、まあ隠さなくてもみんな知っていることなんだけど、高等部を卒業する時には奥様になる子はもう妊娠していたのよ」
「え“?」
ちょ、待って!
「彼、既婚者なんですか!?」
高校生で妊娠云々よりもそっちに驚いた、その驚きを山本先生は嬉しそうに笑って肯定する。
「結婚自体は卒業してからね。でも妊娠は早々に判って、それで鳴海先生とずいぶんやりあったけど、結局岩崎君のご家族が学校には迷惑はかけない、自分たちが面倒を見ると言ったから結婚に進んだのよ。ああ、やりあったのはそこが最初じゃないわね、岩﨑君が転校してきて間もなくから、それも上山さん関係で……本当にあんなに熱い子だったなんて、あの見た目からは想像つかないんだけど」
ああ「ムカつくだけ」と言っていたのはその事か。上山は奥さんの旧姓なんだな、でも鳴海先生の様子じゃそんなことも忘れたように嬉しそうだったけど。
「岩崎君のご実家はお金持ちって聞いているわ、だからお金の面は心配ないみたいね。学業もきちんと修めて、そしてお子さんはもう二人目がいらっしゃると聞いているわ」
「えええーっ!?」
あんなイケメンがふたりの子持ち!?
「やっぱりびっくりするわよねぇ。あれこれ言われたり、後ろ指を刺されることもあるでしょうけど、私はいいと思うのよ。今の少子化の原因は女性の高学歴と社会進出も一因だと思うわ。私の若いころなんて、高卒で就職は当たり前、しかも女性の就職は『腰かけ』なんて言って結婚までのつなぎのような感じだったもの。でももっと勉強したいとなれば、学生のうちに子どもを設ければリスタートの時間も早まるじゃない。周りのサポートさえあれば、そういう生き方もアリだと思うの」
「そりゃ……そうですけど……」
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