#3 恋に落ちよう(恋愛初心者×御曹司)※金銀スピンオフ

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「いえ、そういうわけじゃ……」 引っ越ししてきてまだ二か月ほど、特に親しい友人もいないし、親が勉強に専念しろと言うからバイトも禁止。ひとり暮らしの家に帰っても暇だから、とは言えず。 「まあ……好きですけど……」 岩崎先輩は優しい笑みを浮かべた。こんなイケメンで、こんな風に笑うなんて、本当に卑怯だよね。きっと今までたくさん女を泣かしてきたに違いない。 その時舌打ちが聞こえた、何気なく視線を向けると、女の人が睨んでいた。 ……岩崎先輩のそばにいるな、という意味だと、すぐに判った。 先輩も気付いたみたい。 「図書館で賑やかにしたら駄目だね。ちょっと出ようか」 岩崎先輩は、広げていた本を閉じた。 「え、でも、岩崎先輩は卒論が……」 「まだ期日は全然先だから大丈夫だよ。少し息抜き」 そう言って連れ出してくれたのは、駅前のカフェだった。 「少しは京都に慣れた?」 先輩はコーヒーをブラックで飲んでいた。なんて言うか。カップを傾ける、そんな動作すらかっこいいと思える。 「慣れたのは学校と寮の往復くらいです。観光は、有名なお寺には行きましたけど。しかも土日に」 「まあ、有名なところだと平日も込んでるけどね」 そんな気の置けない会話を楽しんだ。 先輩は聞き上手だ、やんわりとした物腰がまたよくて、なんでも話したくなるマジックにかかる。本当にどうでもいいような言葉でも、先輩はふんふん、それで?って聞いてくれるから、たくさんしょうもないことをしゃべったような気がする。 っていうか、私、舞い上がってるわ。夢、見ている感じ。人生初の男性とふたりきりのカフェデートが、こんなにもハイスペックな人だなんて! 夕べ見たテレビで面白かった話をすると、先輩が微笑む、その時だった。 「シン」
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