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#23 長くすれ違った恋(印刷工場長♀×IT社長♂)
大学時代に好きな人ができた、同じサークルに所属する1学年上の男性だった。
告白したけれど、恋人がいるからと断られた。
私はありがとうと伝えた、はっきり言ってくれてよかったと。
それからも特に変わらずサークルで会っていた。彼も私も何食わぬ顔で過ごす、それはむしろ助かった、変に気を使われたほうが辛かったと思う。
そして年末にあった飲み会の帰り、ビルの4階にある店から出る際、エレベーターでふたりきになってしまった。
私はちょっと嬉しかった、わずかな間でも二人きりになれるなんて。私のドキドキなんて彼は判らないだろうなと思った。
そして彼はちょっと酔っていた、ふたりだけで飲み直さないかと誘われ私は断れなかった。
小さな居酒屋に入った。まだ混んでいる時間帯で、カウンターで横並びに座って。近いなと思っていた、きっと酔っているんだなと思ったけれど純粋に嬉しかった。手を握られても、太ももを触られても何も言わなかったのがいけなかったのか、ホテルに誘われてしまった。
好きだった、断れなかった。むしろ嬉しかった。
最後の思い出のつもりだった、一度くらい彼に抱かれたいと思った、でもそれがいけなかったのか。
それからは月に1度か2度のペースで「会いたい」と誘われるようになった。私も断ればいいのに会いたさに、求められることの嬉しさに負けて彼に体を差し出していた。
そうして彼が卒業するまでの1年ちょっと、体だけの関係が続いた。呼ばれれば会いに行く、求められれば足を開く。そういうものが『セフレ』と呼ばれるということに気づかないふりをして会っていたけれど、卒業した途端連絡が途絶えたことでその現実を知る。
彼の連絡先は知っているけれど私から連絡したことはなかった。呼び出しはいつも彼からだった。
彼の連絡先は、今でも大事にとってある。
電話番号。
メールアドレス。
通信アプリのアカウント。
大事な彼とのつながり。もう5年も経って全て使えなくなっているかもしれないけれど。
それでも。私にとっては一番大好きな、大事な人だった。
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