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「あの……子供じゃないんで」
それくらいできると訴えた、だって、先輩のあったかい指が、肌に……!
「ごめんごめん、でもこれくらいしっかり留めないと、事故の時にメットだけ飛んでいったら意味がないからね」
「先輩が事故るなんて思えませんけど」
「判らないよー? はい、これも怪我防止にね」
そういって革製のジャケットのポケットから出したグローブをくれる、ああ、先輩のぬくもりが……。
「じゃあ、ここに足かけて」
後輪の軸の脇についている爪を出してくれる、タンデムステップっていうんだって。そこに足をかけて後部座席に跨った。
「身軽でいいね、じゃ、しっかり掴まって」
「え、どこに……」
シートにベルトがある、そこだろうか。後ろにバーもあるな、どっちに……。
「ここ」
先輩はそういって私の手を掴み、自らの腰に当てた、思わず「ひえっ」と声が出てしまったけど、先輩に聞こえていないことを祈る。
「車体でもいいけど、掴まっててくれてた方がこっちも感覚が判りやすい」
「そ、そうなんですね……」
触れていた方がいいのか、とはいえ腰をがしっと掴む気にはなれずジャケットの裾を掴み……っていうか、先輩腰細!
「じゃあ、動くよ」
先輩は優しく言ってスタンドを上げるとゆっくりとバイクを走らせる。
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