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☆
翌週、本家の邸宅で葬儀が行われ、荼毘も済んで一族で戻ってきた。
骨壺が収まった桐箱を仏壇に置き、本家の当主・明宏は大きな背中を丸めてため息を吐いた。手塩に掛けて育ててきた、社会人としても楽しみにしていた息子を失ったのだ。
皆も声をかけられず、じっと時を待つ。
「──あなた」
痺れを切らした巴が声をかけると、明宏は大きなため息を吐いてから、くるりと体を反転させる。皆を見回した時には当主の威厳は戻っていた。
「みな、今日はご苦労だった。明次も無事に三途の川のほとりへ行けたことだろう、恩に着る」
何人かの鼻をすする音が聞こえて、明宏は再度ため息を吐いてから言葉を続ける。
「言わずもがなだが、次の当主には鈴を据える」
男も女も関係ない、水無川の家は長子が継ぐ事が決まっている。鈴の兄弟は明次ただひとり、ならば鈴にその順番が回ってくる。
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