192人が本棚に入れています
本棚に追加
そういって中へ案内された、とても長い廊下を歩く、綺麗に整理された中庭が素敵だった。
どうやら全室個室の京料理の店……いやいや、こんなところの食事っておいくら万円なのよ?
8畳間の床の間まである部屋に案内され、座った途端私は全身から力が抜けた。
「──すみません、少し横になっていいですか?」
畳にふかふかの座布団、そんなものにその衝動を抑えきれない。先輩は笑う。
「いいよ、バイクは疲れるよね」
頷きながらのお言葉に甘えて私は溶けるように横にならせてもらった、はあ……天国~。
「ここは出てくるものは決まってるから、飲みもの選ぶくらいだな。お酒は駄目だね」
先輩は運転あるし、私は未成年だ。
「ソフトドリンクも各種あるけど、なに飲む?」
「あーええっと、お茶……緑茶以外でありますか?」
「ほうじ茶があるよ、茶葉、選べるけど」
ほうじ茶の茶葉が選べる~!?
「あー……判らないので、どれでもいいです」
「じゃあ、田原さんに聞こう」
店員さんの名前かな、店員さんを名前で呼ぶほどか……メニューも見ないで言うし……。
「あの、ここって先輩のお宅でやってるお店ですか?」
「ううん、違うよ」
なんだ、また違うのか。
「でもお客さん連れて度々来てるよ」
そうか、それであの歓待か。
「ごめんね、知ってるお店ばっかりで。これでまったく知らないお店に行って、戸惑ったりしたら恥ずかしいなと思ってさ。かっこつけたくて知ってるお店ばっかになっちゃった」
「そんな! そんなこと思ってないです!」
最初のコメントを投稿しよう!