192人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやいや、俺は鈴ちゃんより、10歳も年上で!」
「10くらい、どうと言う事はない」
明宏は冷たく答える。
「明次くんより年上なんですよ!? そんなの鈴ちゃんが嫌でしょう!」
「そうなのか?」
言われて鈴は肩を竦める、本当のことなど言えるはずがない。
「いやいや! 矢部の保くんのほうが、鈴ちゃんと歳も近いし!」
鴨居にも年頃の男はいるが巴が鴨居からの輿入れだ、従兄とは言え長く同族婚を繰り返してきた一族はそれは避けたい、どうしても相手がいなければ選ぶが、今回は除外で確定だ。
だが残る矢部の家にいるたったひとりの男児は、鈴より学年で言えば5歳年下だった。
「保くんは、まだ中学生だ」
しかも一年生である。
「いつまでも中学生じゃないです!」
「鈴、お前はどうだ?」
突然話を振られて、鈴は顔がにやけないようにするのが精一杯だった。多少不機嫌に見えてもいいと思い、呟くように応える。
「そうねぇ、年下よりは年上の方がありがたいかなぁ」
「鈴ちゃん、落ち着け! 君は恋人がいただろう!」
「あー……」
最初のコメントを投稿しよう!