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「さて、意見を聞こうか」
明宏の威圧的な物言いに、本当に『聞く』だけとだろうと侑斗は思う。それでも心変わりは期待した。
「だってご存じでしょう、鈴ちゃんは教え子ですよ? その教え子といきなり結婚しろってないですよ?」
「事情が事情だ、侑斗くんも判ってるだろう、呑んでくれ」
「もう時代も令和になって、そんな慣習を守る必要がありますか!?」
「破りたいなら自分たちの代でやってくれ。俺は必要だと思い巴を娶り、夏菜子さんを嫁に迎えるつもりでいた」
その通りだ、侑斗は天井を見上げる。自分たちの代で、とは自分は鈴を娶り、その子の代で自由恋愛を許せという意味だと判る。
「私じゃ、嫌なの?」
鈴は呟くように言った。兄が亡くなり、次は自分が嫡子になると判って、微かに期待していたことが実現しようとしている、侑斗と特別な関係になれるのだ。
「いや、嫌ってわけじゃ……」
「処女じゃないのが気に入らない?」
「そんな事言ってないっ」
鈴の言葉に明宏が声を上げかけたが、それを巴が慌てて止める。男親にしてみれば未成年の娘が既に関係があることは認めがたいようだが、巴は交際相手がいることは聞かされていた、さすがに肉体関係まで突っ込んで聞いてはいないが、今時の子はそれくらい当たり前だとは思っている。
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