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見えない障害
「この人、夢花と同じ名前だよ! 花が香だけど」
テレビCMのテロップに出演者の名前が表示されている。出演者の名前と言っても、役としての架空のものである。
その名前を見たお母さんが、私と同じ名前であると、私に教えてくれるのだ。お父さんも妹も、何も言わない。
「ねえ、そうでしょ? ねえ、夢花。返事して」
「うん……」
私は渋々、猛烈に無感情な返事を返す。
「ねぇ、なんでそんな冷たい言い方するの……夢花なんか嫌い!」
「は? さっきから何度も言ってるでしょ! なんで冷たい呼ばわりされなきゃいけないの」
「ねえ、あなたからも夢花に言ってよ!」
お父さんに泣きつくのだ、娘の思いやりの無さに対し、親としてちゃんと躾るようにと。そしてお父さんは、私を注意する。お母さんの味方なのだ。あぁ、気が狂いそう。
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