(読み切り)今日は渋谷で、5時

1/1
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ

(読み切り)今日は渋谷で、5時

(ルクイユのおいしいごはんBL用) BLおいしいごはん祭 テーマは「ごはん」 スイーツもOK 男子同士カップルが、ごはんを食べてほっこりする内容なら何でもOK 期間:4/29~5/9 小説/イラスト/漫画OK 小説140字~・ツイノベOK サイト投稿はリンク貼り付け 1人何作品でももちろんOK。 参加方法: 下のハッシュタグをつけツイートするだけ! #ルクイユのおいしいごはんBL ******************** 『5時に渋谷で待ち合わせな』 妻からLINEが来て、俺はそわそわしながら駅へと向かった。 (シャツは裏表逆に着て…ないな、ズボンのチャックもOK、と) フリーランスの仕事をしてる俺は私服に自信が無い。 朝、妻がざっと着るものをコーディネートしておいてくれたのには、さすが、と思った。 家の鍵も閉めたしICカードも持った。財布の中身も問題ない。 慣れない駅構内で右往左往し、やっとの思いで待ち合わせ場所を見つける。 忠犬の銅像前でスマホを見ながら俺を待っていたのは、3つボタンのクラシックスタイルなスーツを着こなしたすらっと背の高い男。いつ見ても見惚れる。 「すまん、待たせた」 俺が声を掛けると、その男─妻─はまたかというように少し冷たい視線を俺に投げかけた。うう。でもその冷ややかな眼差しも格好良くて好きだ。 「入場制限があるんだ。遅れるなと言っただろう」 「ほんとすまん。すぐ行こう」 その店の前は、ネットで配布された整理券を持った客が長蛇の列を作っていた。俺達ももちろん事前に入手した整理券番号を手にその列に並ぶ。 列は…98%女性だ。男は俺達2人のみ。いつものごとくチラチラと見られるが、妻は気にすることなく手渡されたメニューを見ながら注文の確認をしていた。そういうところも男前で愛してる。 「お前もすぐに頼めるようにしておけ」 妻がビジネスライクな口調で言う。慌てて俺もお目当てのメニューを口の中で諳んじた。 (中津川産栗きんとんのモンブラン) 1日限定20食。メニューの事前予約は不可。 だが俺は確信していた、必ず口にすることができると。なぜなら、妻と一緒だときまって狙っていたスイーツがゲットできるのだ。 おそらく妻はなんらかの特殊能力を持っている。そう俺が言うと、妻からは 「バカかお前は」 と一蹴されるが。 だが自信を持って言おう。妻にはスイーツを引き寄せる能力がある。 少しずつ列が進み、やっと俺達の番が来た。 メニューを回収に来たスタッフにあらかじめ注文しておいたので、席に座って間もなくモンブランと抹茶パフェがやってきた。可愛らしい店内に不釣り合いな大男2人がスイーツに挑む姿に、視線が一斉に集まる。どうだ、いいだろう。俺は今、愛する妻とデート中だ。 いっちょ見せつけてやるか。なぁ、 「お前のもひと口くれ」 「勝手に取っていけ」 「あーん」 「は?」 「あーーーん!!」 妻は嫌そうな顔をしながらも自分のスプーンで抹茶アイスをすくった。 俺は口を大きく開けながら、その瞬間を待つ。 甘いものに目がない妻と俺との出会いは運命だったのだ。これはもう妻の特殊能力と俺の運の良さの賜物だろうな。 さて、来週はどこで妻と待ち合わせしようか。 おわり。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!