第1話 ミストレス―冷たい牢獄―

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 男の手が頬を撫で、男の舌が耳を舐める。  男の手が頬から首へ、首から鎖骨へと下りる。  鎖骨へと下りた手が、双丘を撫でる。じわじわと焦らすように、ゆっくり、弱く。頂きに触れるのを避けるように、男の手が動く。  男の舌が、耳の裏側から表へ、表から中へと執拗な愛撫を繰り返し、耳たぶを軽く甘噛みされる。 「あっ、」  思わず漏れた嬌声に、女性は慌てて両手で口を塞いだ。 「なんだ、もう感じたのか。歌澄」  男に耳元で名を呼ばれる。 「そ、それは社長が……」  思わず反論すると、男の手が双丘の頂を強く摘まむ。 「ん、何と言った。呼び方に気を付けろと言っているだろう」 「も、申し訳ありません。京也さん」  女性は慌てて、男の名を口にした。  男の名は、千川京也(せんかわきょうや)。  ここ数年で急成長したITベンチャー企業、株式会社ケルスの創業者であり、代表取締役社長である。  ケルスは、革新的なアイデアとそれを形にする確かな技術力で、あっという間に世間の話題を浚った。  商品は、企業向けのシステムが中心だが、それを応用した個人向けのSNSやアプリ開発なども手掛けており、一般の知名度も高い。  創業者であり、社長である千川にも、当然世間の目は集まり、整った容姿も相まって、その一挙手一投足が注目されている。
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