暗闇の中を往くふたり

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 甲斐は琉和に阿倍を取られるぐらいならと、阿倍を暗闇(うちゅう)の中に放り込んだその結果が「阿倍のいない世界」である。 甲斐にとっては「阿倍のいない世界」は暗闇の中も同然。宇宙局局長の名誉も、琉和も子も、暗闇の中では見えないし、見ようともしない。甲斐には阿部しかいなかったのだ。 甲斐は天を仰ぎ、どこにいるかも分からない阿倍に向かって語りかけた。 「なぁ、お前のいない世界がこんなに真っ暗闇だと思わなかったよ。お前はずっと宇宙を地に足もつかずに浮いてるのか? 俺も、地に足がつかなくなればお前を追いかけられるのかなぁ?」 宇宙の暗闇の中に消えた阿倍と、心の暗闇の中へと消えた甲斐…… この二人は暗闇の中にいても巡り合うことはもうない。                               おわり
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