暗闇の中を往くふたり

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 琉和であるが、二人が宇宙飛行士になった後に知り合った女性である。これまで阿倍と甲斐の二人だけの宇宙に割り込んできた光そのものであった。 甲斐は琉和を心の底から好きになった、しかし琉和の心は阿倍に奪われていた。それを知ったのは甲斐が琉和に告白をした時であった。 「琉和、俺、君のことが好きなんだ。結婚を前提に付き合ってくれないか?」 しかし、琉和は申し訳無さそうに「ごめんなさい」と断るのであった。その瞬間、甲斐の目の前は暗闇に閉ざされた。一世一代の愛の告白をしたのに無碍に断られてしまったのである。 甲斐はそのショックから、激昂気味に琉和に詰め寄った。 「どうしてだよ! 俺が嫌いなのか?」 「そういうわけじゃないの」 「ならどうしてだ! 宇宙飛行士だから宇宙の藻屑になるかもしれないっていうのか? 旦那が宇宙塵(デブリ)になるのが嫌なのか!?」 「違うの…… あたし、阿倍さんのことが好きなの」 甲斐は肩を落とした。誰よりもよく知っている親友の阿倍が好きなら仕方ない…… あいつは素晴らしい奴だと琉和に何時間でも語れるぐらいだ。 そう、昔から二人一緒で喜びも悲しみも分かち合ってきた俺が言うのだから間違いない。だが、ここにきて初めて「分かち合えない」ものが出来てしまった。好きな人を分かち合うことは出来ない。甲斐は身を引く決意をするのであった。  その後程無く、阿倍は琉和と付き合うことになった。琉和から阿倍に告白し、見事に告白に成功したのだった。甲斐は阿倍を祝福した、心にしこりが残りながらもそれを口にも顔にも出さずに見事にポーカーフェイスで祝福者を演じきるのであった。  そんな中、宇宙局より二人に指令(ミッション)が与えられた。地上400メートルにある宇宙ステーション「アルタレ」での200日(約半年間)の長期滞在を命じられたのである。 「アルタレ」の滞在チームは緊急帰還用の宇宙船の軌道上寿命である200日(約半年)ごとに交代する。その交代メンバーのうちの二人に阿倍と甲斐が選ばれたのだった。
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