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イワンはコントロールパネルを操作し、カメラ付きロボットアームを操作する。そして迎えたベストアングル。
「えっと、日本では写真撮る時の掛け声はなんて言うんだったかな? 祖国みたいスィールでいいのか?」
ここで「日本ではチーズ」と言うと説明しても良かったのだが、早く「アルタレ」内に戻り床に足をつけたかった二人はそのまま「スィール」の顔で写真撮影をすることにした。
その瞬間、阿倍は風に煽られる凧のように激しく揺られ、弾き飛ばされてしまった。
どうしたことだろうか。阿倍は焦りつつも命綱を握り、上も下も横もない宇宙空間で耐える。甲斐は「アルタレ」と阿倍を繋ぐ命綱の「アルタレ」側の根本を見た。明らかに部品が損傷し外れかかっている。慌てて「アルタレ」内にそれを報告する。
「エマージェンシー! シープの命綱! 『アルタレ』側だ! 部品に不具合発生! 至急対処を!」
イワンはコントロールパネルからカメラを操作し、阿倍の命綱を確認する。部品がガタガタと揺れており、今にも外れそうになっていた。カラビナフックのようなアナログな形で接続されているために「アルタレ」内から命綱を巻き取り引き寄せるなどといったことは出来ない。
「ファーム! こちらからは何も出来ない! いいか!? ファームの方がシープの命綱を手繰り寄せるんだ! 二人で一緒に外付梯子を握るんだ! 登った先にはエアロックがある、そこに飛び込むんだ! 頑張ってくれ!」
甲斐は「アルタレ」に張り付き、阿倍の命綱の根本を確認した。確かに外れかかっている、軌道上寿命でこの「アルタレ」自体も動いていたためにどこかでズレが発生し、損傷したのだろう。こんな珍しいこともあるもんだな…… と、甲斐が思った瞬間、自分の声と同じ声をした悪魔が頭の中に舞い降りた。
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