暗闇の中を往くふたり

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 何日が経過したかも分からなくなる頃、阿倍はとんでもないことに気がついてしまった。何も感じないのである。目を開けても目が乾くことがなくなった。いや、目を閉じているのか開けているのかが分からないのである。目を開けているつもりなのだが、何も見えないし、乾きの痛みすらも感じない。息を吐き出してもヘルメットが曇りすらしない。そもそも、息を吐き出せているのかすらも分からない。突然、目の目が暗くなり何も見えなくなるブラックアウトとも違う現象が阿倍に起こっていた。空腹感もオムツの不快感もなくなってしまった。感覚が何もないのである。 俺は生きているのだろうか? 死んでいるのだろうか? 永遠の宇宙の放浪者となった阿倍には分からないことであった……  一方、甲斐であるが…… 無事地球へと帰還し、事故で親友を失った悲劇の宇宙飛行士(アストロノオツ)として時代の寵児となっていた。テレビに出ない日がない程である。 婚約者を失った琉和は涙が枯れる程に号泣していた。人間、悲嘆に暮れている間こそが一番脆いもの。その心の隙間に入り込み、琉和の愛を手に入れ結婚に至るのであった。
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