紅い髪は嫌われ者

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紅い髪は嫌われ者

「殿下! まさか、あの悪名高き  紅髪女の話をご存じないのでござるか!?」  初老の男が取り乱して叫び散らかしている。 「そんなもの、ただの虚構だ……」  その言葉を受けて、一才取り乱す様子はなく黒髪の男は涼やかに笑った。 「その女子(おなご)!   名はクローネだと聞いたでござる!?」 「あぁ、王冠を意味する名……王たる私には相応(ふさわ)しいではないか」 「しかし、しかしっ! ヨーナク様!!」 「私は誓ったのだよ  ずいぶん昔にな……  この娘を必ず幸せにすると」 「それで、この国が滅びてしまっては……  本末転倒、元も子もないでござるよ」 「国は何に変えても守る!  その為に彼女は必要なのだ」 「いくら王の望みとはいえ……  聞けるものと聞けないものがあるでござる」 「もう決まったことだ。  ……あぁ、この我儘(わがまま)が通らないとあれば、  そうだな……よし、私はこの座を降りよう」  悪戯っぽく王は笑ってみせた。 「……殿下」 「案ずるな、降りかかる火の粉は  私自身が綺麗に全て取り除く  ……少し手伝ってもらえるか?」  その表情から説得は無理と踏んだのだろう。覚悟を決めたように一度ずつ息を吸って吐くとしっかりとした声で言った。 「もちろんでござります」 「いつもすまない」  黒髪の男は傍付きの男に首を垂れた。
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