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「旦那様、お気づきですか? 王子たちは実はずっとこの部屋にいたのです」
「何を言っている? いないではないか」
「そうですね……今は旦那様のお腹の中に隠れておりますので」
「どこにも隠れてなど」
そう言って自分の周辺を覗き込んで探す。
「ずっとお皿の上でおとなしくしておりました」
その言葉を聞いて食卓を囲む全ての人の顔が青ざめていく。
ただ、事態が理解できずに固まる者もいれば、吐き出そうと試みた者もいた。
「嘘、嘘でしょう?」
「あーあー! なんてことなの!!」
「全く……ぐちゃぐちゃと
ブズリ様があの世でお嘆きになりますよ?」
クローネは部屋にあらかじめかけておいた魔法を作動すると言った。
「おやすみなさい。みなさま。私の大切な人を殺した者たちの最期に藁の死を」
鬼のような形相の王妃に席を立とうと、手足をバタつかせる。
クローネはあらかじめ自分以外の座る椅子だけに束縛の魔法を刻印していた。
「えっ……体が動かない……」
その声を聞いた者たちは椅子からどうにか逃れようと身を捩る。なんと愉快な光景か……この瞬間を考えクローネはずっと多くの屈辱に耐えてきた。
「いやぁ」
「助けて! なんでもする! するから、助けて」
誰とも知らない親族がクローネに向かって声をあげる。叫びを上げる者たちが、彼女には人間として認識できなくなっていた。
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