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「恋愛天使?何だ、それ?!」
同期の高木が目の前で、涙を浮かべながら爆笑している。こいつは私の話を信じてないらしい。私を馬鹿にしてる。
「ほんとに居たんだよ!それで恋の片道切符を貰って、その裏に書いてある日にその場所に行けば……」
「次の恋の相手に会えるって?」
「そうなの」
「その相手と恋に落ちれば、その人がもう一枚の切符を持ってるって?」
「うん、そうなの」
「その日が二週間後だと?」
「うん、だから、頑張ってるのよ!」
「ふぅ〜ん……」
高木は興味なさそうに返事した後、缶コーヒーをぐっと飲み干した。私は興奮気味で炭酸飲料を飲む。その刺激が、喉を一気に攻めてきてむせてしまう。
「ごほっ!ごほっ!」
「おい、大丈夫か?」
高木が私の背中をさすった。意外に大きくて優しい手のひら。なぜか脈拍が上がっていくのを感じ、びっくりした。いつもはこんなに優しくしないくせに。
「じゃあね!お疲れ様!」
「あぁ、お疲れ」
私は帰宅してから、美顔ローラーや顔パック、半身浴などを頑張ってこなしていた。恋の相手に出会うまで後二週間。その恋を成就させたい!何としても、今度こそは!
私はその恋の相手に想いを爆ぜながら、ピンク色の切符を握りしめ、布団を被って夢の中へ入っていった。
二週間後、
ついに今日という日が来た。私はドキドキと胸を躍らせながら、駅のホームに立つ。
いつもより、一本早い通勤電車だ。だから、周りのメンバーはいつもと違う。つい、キョロキョロとしてしまう。この電車に乗車する人の中に、恋のお相手がいるんだ。
どうしよう……鼻血が出そう。
震えた手で切符の裏をもう一度見てみる。
目印は左耳の穴の奥のホクロ。これってだいぶ寄らないと見つけられないよね?穴の奥って……どれぐらい奥なんだろう。それらしい人を見つけたら、「耳の穴を見せて下さい」って言う?いや、それは変態だ。すぐに失恋へと加速してしまう。どうすればいい?
そんなこんなんしていると、ホームに電車が滑り込んできた。
ドキドキが募る。
私の恋が始まる場所。
さぁ、今すぐ、足を踏み入れろ!
そんなに甘くはなかった。一気に押し寄せてくる人波の圧にやられ、私は電車の奥へと追いやられた。そして、向こう側のガラス扉に頭を打ち付けてしまった。
い、いた、たた、た……
最悪だ。せっかく髪の毛もお化粧もバッチリしてきたのに……もうぐちゃぐちゃ。
「大丈夫ですか?」
そんな最悪な私に手を差し伸べてきたのは……
ヨダレが出るほどの爽やかボーイであった。
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