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めっちゃ、イケメン! 顔は小さいし、首は太い。切長の瞳にはファサッと長い睫毛がお辞儀をしている。 甘い雰囲気の中にある男らしさ。 この人が恋のお相手?! 「あ、の、あなたの左耳の穴を見……」 その時、私の肉付きのいいお尻に何かが触れた気がした。 やだ!痴漢? 「佐々木!大丈夫か?」 え?この声? 私は右手を握られ、扉を抜けてそのまま、着いた駅に降ろされた。繋がれた手は大きくて、優しくて、温かい。鼓動がドンドコ早く鳴る。 「大丈夫か?」 私を痴漢から助けてくれたのは、同期の高木だった。どうして高木がこの電車に?乗る電車違うよね? あ、それより、さっきのイケメン! 「高木!ありがとう!じゃあね!」 イケメンを逃すわけには行かない。さっきの電車にまた乗り込まないと! 私は高木の手を離し、駆け出そうとした。 「おい!待て!あいつはお前の相手じゃない!」 「へ?」 「切符を持ってない」 「え?どうして高木が知ってるの?」 どういう事?意味が分からない。 高木は照れ臭そうにしながら、私の顔を見つめて呟いた。 「お前の相手は……俺だ。」 「ふぇ?」 「だ、か、ら、お前の恋の相手は、俺だって言ってるんだ!」 高木はポケットから一枚の紙切れを出し、私の前に見せてきた。 それは私と同じピンク色の切符。 〝恋の片道切符〟。 「えぇーーー?!どうして高木が、同じ色の切符を持ってるの?!」 「一年ぐらい前、彼女に振られた時に貰ったんだよ。恋愛天使に。」 「一年前?」 「うん。この切符の裏見てみろ」 高木の切符の裏には、私の切符と同じ日にちと同じ電車の時刻が書いてあった。 頭がパニックになって、よく理解出来ずにいた。高木が、私の恋の相手? 「この切符貰って、約一年後に恋の相手が現れるんだって待ってた。そしたら、二週間前にお前がその切符の話をしてきたから、びっくりしたよ。同じ日にち、同じ時間の電車だったから」 「うん、うん、」 私は訳が分からないまま、ただ、頷く。 「それで、今日その時間の電車に乗り込んだ。お前が居るかなって思ってたら、変なおやじがお前のお尻を触ろうとしてたから、必死で助けて次の駅で降りたんだ」 「うん、それは、ありがとう。それで?」 「はぁー……お前はほんとにバカだな」 「むかっ!何よ!高木!」 私は高木の頭部目掛けて拳を振り上げたが、その腕を高木にぎゅっと掴まれた。 「なっ?!」  「お前が好きだ」 「はぁ?」 「今日、気付いた。いや、いつからだ?分かんない。俺の恋の相手がお前だって知って嬉しかったんだ」 何、それ? いつもはそんなに恥ずかしがらないじゃない。 顔も、耳も、真っ赤に染まってるじゃない。 見てるこっちが恥ずかしくなるぐらい。 でも、嬉しい。 高木が私の恋の相手で嬉しい。 「私も、たぶん、高木の事が……好きだったかもしれない」 「だろ?」 私たちは駅のホームで見つめ合い、笑い合った。そして、高木がやたら私の口元を見てきた。 「な、何?」 「恋の相手の目印が、口元にある小さなホクロだったんだよな」 「え?」 高木の顔が急接近。 チュッ! 「なっ?!」 「へぇー、お前こんな所にホクロあったんだな。知らなかった」 私は真っ赤な顔で、また拳を振り上げた。 「ねぇ、じゃあさ、高木の左耳の穴の中のホクロ、確認させてよ?」 「会社帰りに俺んちで耳かきしてくれたら、見せてやるよ」 私は〝恋の両想い切符〟を手に入れた。 end
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