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だが、それからもアカネの着信は何度もあった。
我慢できなくなった私は鞄からスマホを取り出すと、
「もしもし?」
『ね? なんですぐに出てくれないの? 私達の絆ってそんなもの?』
「ごめん。スマホをずっとバイブにしていたのよ」
『本当? 実は私のこと鬱陶しいと思ってる?』
「ちょっと! 本当に違うから」
『まあいいけど。 リサ今どこにいるの? もう帰ってる?』
スマホの通話口から不満を含んだアカネの声が漏れた。
「うん。ごめん。今帰ってるところ。何か用?」
『今から会ってほしいの? いけるでしょ?』
「ごめん。今からアカリとご飯に行く約束してるんだ」
『アカリ? アカリって志賀アカリのこと?』
「うん。そう」
『ふ~ん。ご飯ね~……』
そこでアカネは言葉を切った。まさか怒ったのだろうか。
そしてしばらくすると通話口の向こうから小さな舌打ちをする音が響く。
「ア…アカネ?」
『へ~。そっか~。私とアカリのどっちが大事なの? もちろん私だよね?』
まただ。アカネの気持ち悪い友情を押し付けるような発言。私はアカネの所有物ではない。
だけど、私は「二人とも大切な存在だよ。けど今日は先にアカリと約束をしちゃったから、今さら約束を破るのは無理でしょ?」と言って、アカネを怒らせないようにする。
『ふ~ん。まあ…別にいいけど』
「ごめん。急いでるからまたね」
『あ! ちょっと待ってよ! もしかしてリサ…あの道通ってるの?』
アカネは少し疑うように聞いてきた。
「あの道?」
『リサの帰り道であるでしょ? 暗くて不気味なあの道』
「ああ~。うん。もうすぐそこを通るところだけど、それが?」
『ほら? この前話した時に、そこでよく事件が起きるって教えたでしょ』
「事件って何よ? いきなりやめてよ。怖いじゃん」
『え? リサ忘れた? も~。帰りにそこを通った時に後ろからいきなり噛みつかれるって話でしょ』
「あ~思い出した! 最近、噂の鬼のこと? なんか、夜に一人であの道を歩いていると出るっていうやつよね?」
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