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危機
多分、お母さんはキッチンにいる。
行こう。
私は数歩先にあるキッチンに向かう。
ドサドサッ
「わっ!」
私は何かを落としたのか足に衝撃が走って声を上げる。
私は気を取り直して懐中電灯を手に取り、そろりそろりとお母さんのもとへ向かう。
「あぁ、ほら」
お母さんがボウルを差し出す。
「……!」
思っていたより冷たい。
ご飯の入ったボウルが冷蔵庫から出したばかりみたいに冷たい。
これじゃあ、食べるのはキツそうだな。
じゃあ、今日のご飯はどうするんだ?
「もしかして、今日ご飯なしなのか⁉」
洋平が珍しく大きな声を出す。
今日のご飯をよっぽど楽しみにしていたのか……。
まったく、洋平の食欲にはあきれるわぁ。
私は深くため息をつく。
でも、これは本当に問題だ。
いつ停電が終わるかわからないのに。
「何かないわけ?」
私はお母さんに聞く。
「そうねぇ……」
そういいながらお母さんはあたりをうろつき始める。
「非常食とかないのか?」
お父さんの声が聞こえる。
私は声のした方にライトを向けると、お父さんはまぶしそうに目を細めた。
「非常食……そうだわ! 非常食があった」
お母さんはひょいと私からライトを奪うと奥の部屋へと向かう。
ドタドタと足音が聞こえたと思うとお母さんがありったけの食料を持ってきた。
「食べましょ」
お母さんは静かに言うと、優しく微笑んだ。
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