chapter 7

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   ―――それは、確かに望み通りの投球だった。  それが、門倉のバットに完璧に捉えられた。 『打ったぁ! これは大きい、文句なくスタンドに入るでしょう!』  ワンちゃんの力投同様、フルパワーのスイングで飛ばされたボールが、高く、遠く飛んで行く。  行方を目で追いかけたワンちゃんが、センタースタンド中段に飛び込んだのを確認して、ふっと息を吐き出した。  ライトスタンドの歓声を一身に受けて、悠然とバットを手放す門倉を前に、口元に微かな笑みを浮かべる。  その顔は、ホームランを打たれたってのに、妙にさっぱりしてるように見えた。  ダイヤモンドを一周する門倉を追いかけていたカメラが、ホームランのリプレイに切り替わる。 『会心の当たりでしたねえ』 『さすがは門倉君、粘って粘って、最後は自分のスイングをしっかりしました』 『一点リードされた西城高校、これ以上の追加点は阻止したいところですが』 『門倉君相手に優に十球以上投げましたからね。成瀬君の疲労が心配されます。果たしてこの後の明峰打線を封じる事ができるのでしょうか』 その解説が終わると同時に、画面がマウンド上の、打たれたピッチャーに替わる。  同じタイミングで、ワンちゃんが初めて後ろを振り向き、右手を高く上げて何か喚いた。  この割れるような大歓声の中じゃ、声なんか届くはずもない。しかも西城ー味方ーの応援じゃなく、敵対する明峰、門倉への賞賛だ。  それでも、彼の示した二本の指が全ての想いを伝えてる。  案の定、それぞれの場所で思い思いに野手が応え、それに軽く頷いたワンちゃんが山崎に向き直った。  ――ワンちゃんは大丈夫だ。打たれたショックもない。  ただ、解説者の言う通り、門倉への投球が半端じゃなかった。  これから先、その球威でバッターを抑える事は無理だろう。  当たらなくてもいい読みほどよく当たる。  今度は八番打者にジャストミートされた打球が、セカンドとファーストの間を綺麗に抜け、渡辺の前まで転がっていった。  次いで九番、明らかに威力のなくなったワンちゃんの球に、明峰のバッターが容赦なく襲い掛かる。  これだけ打たれ始めたら、小細工も駆け引きも一切ない。  それが門倉のもたらした、後ろに控える打者へのおすそ分け。  わかってるだけに腹が立ってしょうがない。  けど、彼は投げ続ける。  腕が思い通りに振れなくても、どんなに連打されても、きっと最後までマウンドに立ち、全力を尽くす。  多分、門倉の狡猾さなんか頭の中にはこれっぽっちもない。  見えているのは山崎のミットだけ。  今はここが自分のポジションだと、自分自身に言い聞かせるように、無心で投げてる。  その姿を見てるだけで、胸が痛くて……息苦しくて、堪らなくなる。  今、わかった。  さっきの、門倉への意地の投球。  ―――『代理だったんだろ?』  そうだった。  ワンちゃんにとっては、この試合そのものが代理だった。  あの投球は、甲子園出場を断念した俺達への無言のメッセージだ。  敬遠策なんか初めから取る気なかった。それは多分、俺達への意地でもあるんだろう。  俺がマウンドに立ってたら、あの場面で敬遠なんて絶対しない、そう考えたんだ。    それに気付いて、俺も何だか笑えてきた。  どこまでもバカな奴。  いくら俺でも、あの門倉相手にそんな真っ向からぶつかるわけねえって。  込み上げてくる笑いに混じって、ほんの少し涙が滲んだ。  ……ごめん、ワンちゃん。  ありがとな。  最後まで、しっかり見てるから。  だから、負けるな!    2アウトまで追い詰めながら、一点の追加点を得た明峰の猛攻が続く。  八、九番に連打を浴びて、ファースト、セカンドと塁が埋まり、一番、俊足の左打者が打つ気に満ちて声を張り上げる。  この機に一点でも多く突き放すつもりだ。  対する山崎のミットは、全部低目へのストライク。  けど、そのストライクが入らない。  苦しいんだろう、きっと。  あのワンちゃんが……コントロール抜群の右腕が、ストレートで3ボールを与えてしまうほどに。 「―――っ、もうダメッ、見てらんない!」  この苦境で、観戦していた女子が半泣きで叫んだのを皮切りに、それまで俺達に遠慮してか、静かに見ていた後方が急にうるさくなった。 「なあ、もっとマシなピッチャーいねえのかよ」  何も知らないよその部員が、初めから観戦していた野球部員に当然のごとく尋ねる。  その不用意な発言に、激怒して席を立ちかけた。刹那、 「いないから成瀬君が投げてんじゃない!」 「県大会じゃショートだったんだよ? 必死に投げてんのにえらそうな事言わないで!」  反発した女子があっちこっちでワンちゃんの援護射撃を始め、騒然となった。 「頑張って! 成瀬君」 「神様っ、成瀬君を助けてっ!」  みんなもう泣いてるし、わっけわかんねえ事口走ってやがる。  和泉の食堂もあっという間に甲子園の客席、しかもレフトスタンドと一体化していた。  機先を制され、ガリガリと頭を掻いて座り直したら、義純がフッと笑った。  こっちも壮絶だけど、試合の方はあと一球外せば満塁。  何とかストライクを入れろ!   そしたら、絶対仲間が助けてくれる、そうだろッ?  これまでも、何度となくワンちゃんに向かって呼び掛けた。  その度、まるで俺の声が届いてるかのようにピンチをしのいでくれた。  今度も何とかする、絶対!  そんな事を勝手に信じ、見ている先で、ワンちゃんがロージンバッグに手を伸ばした。  使い方がどんどん上手くなってる、っていうかまるっきりピッチャーじゃん。  県大会で数多く対戦してきた、どの投手よりも馴染んでる!  打つ気に満ちていたバッターの気を、上手く散らす事ができた。  あとたった一つ。  セカンドのランナーを目だけで牽制して、バッターに集中する。  後ろで騒ぐ女子じゃないけど、心境は一緒だ。  誰でもいい、限界ぎりぎりで投げてるワンちゃんを助けてくれッ!  彼自身、ほとんど他人任せに投げた一球、だった。  それが、一筋縄ではいかないバッターに捉えられた。  抜けるっ!  そう察した瞬間、もうワンちゃんは走っていた。  誰よりも速く、自分の行くべき場所へ――  ――あれは、俺が旧式の筋トレ用の台の上から、ずり落ちかけた時。  視界が180度回って目の端に捉えたのは、自転車のサドルを飛び越え駆けて来た、ワンちゃんの白い夏服。  あれが見えて、なんか安心したのを覚えてる。  もちろんそれがワンちゃんー成瀬北斗ーだとは思いもしなかったけど。  あの時と同じ、それ以上の速さで三塁に向かって走るワンちゃんが、レフトに抜ける打球を横っ飛びで止めた結城キャプテンに右手を上げて叫んだ。  声が届かなくてもわかる。  強烈な引力。  それに導かれるように、体勢を崩しながら強引に振り向いたキャプテンから、これ以上ないほど絶妙のポイントにボールが飛んで来た。  最高の位置でボールをキャッチしたワンちゃんが、セカンドランナーとほぼ同時にサードベースを駆け抜けた。  三塁塁審のジャッジにカメラがピントを合わせる。  結城キャプテンの好プレーが明峰のランナーに勝った事を知った瞬間、真上のレフトスタンドが、背後の和泉の学生達が、歓喜の雄叫びを上げた。  グラウンドに倒れ込んだ結城キャプテンの身体を、ショートの迫田が支え起こす。  駆け寄ったワンちゃんを見て、満足そうな笑みを浮かべた結城キャプテンの額には、ワンちゃんへの送球を優先した為にできた擦り傷が―――。  ……あいつら、みんな傷だらけだ。  そんでも、百戦錬磨の明峰の選手よりなんか輝いて見える。  活き活きしてやがる。  うらやましいって気持ちはもちろんある。  けど、代表の座を譲ったのも間違いじゃなかった。  今の俺に、あそこまで対等に戦える力は残念ながらないもんな。    十回表、門倉の一発だけでどうにか後続を断ち切った西城は、その裏、わずか一点差で一番松谷の好打順。  今日最高に当たりまくってる奴だ。  ボックスにあいつが立つだけで、レフトスタンドからはワンちゃんに負けないほどの歓声が飛ぶ。  特に、ワンちゃんの時より女の甲高い声が多いのが、不思議っちゃ不思議なんだけど、西城の内部の事は俺にはわかんねえ。  硬派な感じのワンちゃんから言えば、松谷は軟派って感じだろうか。  どっちにしても対照的な二人だけど、野球に関しての相性が抜群にいいのは、この試合を見ただけで十分伝わってくる。  その松谷が門倉から二度目の4ボールを選び、出塁した。 『ああっと、門倉君、一番バッターの松谷君に今日二度目の4ボールです』  この大事な場面でまた4ボール? 今度は何を企んでやがるんだ?  胡散臭い真似をする門倉に、イヤな気分で目を遣った。  当たりまくってる松谷より、疲れ果ててるワンちゃんの方が打ち取りやすい、とでも読んだのか?  そう考えて、そんな自分の読みにイラつく。  当たってるだけに、正直キツイ。 『これは明峰ピンチですよ。西城は恐らく送ってくるでしょう。よほどの事がない限り、得点圏にランナーがいる状態で、成瀬君まで回ります』 『彼の得点圏打率は八割超えてます。これはとんでもないアベレージです』 『まさしく「怪物」ですか。そんな呼び名とはほど遠いイメージなんですが』 『まったくです。ですが六回に見せた守備といい、九回に見せたピッチングといい、計り知れない可能性を秘めているのは間違いないでしょう』 『言えてます。門倉君の安定した素晴らしいピッチングはもちろんですが、成瀬君の……何と言いますか、人間味溢れる投球は、何だか一緒になって応援したくなる、そんな気持ちにさせられます。なかなかいませんよ、こんなピッチャー』 『あの、…残念ながら彼は投手じゃありません。一応フィールダーのはずなんですが』 『あっ、そうでした。臨時の投手でしたね。失礼しました』    そうだ、フィールダーに専念できていたなら、次の打席、きっと打っただろう。  そして同点に追いついて、反撃の足がかりを作る。  けど、今は―――。  解説者の怪物発言にも、八割越えのアベレージうんぬんにも、「ほら見ろ」なんて突っ込み、とてもじゃないけど言えない。  そんな事を考えてたら、先輩達の意外な会話が耳に入ってきた。 「門倉の奴、相当追い詰められてるな」 「ああ。向こうも必死だろうぜ。こんだけ粘られちゃ、相手を見下す余裕なんかなくなってるに決まってる」 「まあな、あっちは勝って当然だもんな。代理の出場校相手に初戦敗退、なんて無様な真似、できるわけねえし」 「それがプレッシャー、か」 「多分な」  果たして本当にそうだろうか?   門倉ほどのピッチャーでも、制球に苦しむ事があるんだろうか?   ノーアウトでファーストランナーを出すなんて。  俺なら、どうだろう。  考えかけて、無駄な事は止めた。  他人は他人、自分が違うとしても、他の奴がそれに当てはまる保証なんかない。  それがわかるのは、やっぱあそこに立ってるあいつらだけなんだ。    それはともかく、明峰の窮地は西城の好機だ。   突然舞い降りてきたチャンスに、レフトスタンドの応援が一際大きくなる。  二番打者の渡辺は、予想通り最初からバントの構えだ。 初球、八回に失敗した渡辺が今度は完璧に犠打を決めた。  簡単そうに見えるバントが、実はものすごく難しい技術を要する事、俺もよく知ってる。  転がす場所によったら格好の餌食になるからだ。  逆にバントの上手い奴がチームにいれば、機動力が発揮できる、今の西城のように。 『西城の渡辺君がバントをしっかり決め、松谷君を得点圏に送る事に成功しました』 『一番プレッシャーの掛かるこの場面で、自分の役目をしっかりこなしてきますねえ、西城は。それが彼らの強さなんでしょう』 『驚異的な粘りを見せます、西城高校。対する門倉君は長打だけは避けたいところですが、西城のクリーンナップを抑える事ができるでしょうか?』  1アウト二塁で、続く結城キャプテンが傷の手当もそこそこに打席に立った。  間違いなく最後の打席になる。  彼の構える姿勢からも、一打に賭ける意気込みを感じる。  この回に逆転できなければ、西城に勝ち目はないだろう。  その責任を一身に負い打席に立つ結城キャプテンが、超高校級左腕の門倉に挑む。  力強いフルスイングで掠った打球がライトスタンドへ入り、仕切り直した二球目。  高めに浮いたボール球を、今度は完璧に捕らえた! 『また打ったッ! 今度は西城高校の結城君、門倉君の球を完璧に捉えた! 打球は伸びる。入るか? どうだ? 入れば逆転さよならだッ!!』  前回の久住の当たりを彷彿とさせるような打球が、レフトとセンターの中間に飛んで行く。  それを見て思わず立ち上がり、「入れッ!!」と叫んでいた。  ボールの行方を追うテレビ映像。  その中に、風に大きくあおられる大会旗が映った。 「あ、 ……」  知らず、声が出た。  同じ風に押し戻された打球が見る見る失速し、レフト側に寄ったセンター外野手のグラブに、真っ直ぐに落ちていった。  それと一緒に、俺もストンとイスに座り込んでしまった。 『あ~、残念。もう少しでさよならになろうかという当たりでしたが、甲子園の強風がそれを拒みました。ついていません西城高校、スタンドまでが遠いッ』 「あ~あ、もうちょいだったのに、なんで届かねえかなぁ」 「久住に続いて二人目、か。さすが門倉、そう簡単に打たせてくれそうにはないな」 「あっちの球威の方がまだ勝ってるって事か」  二塁に戻りタッチアップを狙っていた松谷も、捕球された位置が悪く、走るのを自重した。  ぐるっとスタンドの様子を映すカメラ。  2アウトまで漕ぎ着けたライトスタンドは、あと一人コールが。  反対にレフトスタンドからは、言いようのない溜め息が広がる。  無理ない、か。打球が上がった時は、勝利も見えた気がしたもんな。  観客を映し終えたカメラが、ようやく次の打者にピントを合わせた。  まだサークルの中で、片膝を付いてるワンちゃんに―――  立ち上がる事もままならないのか、初めてバットを杖代わりにし、その身を起こす。  まさにその刹那―――  会場を囲む全ての客席から、割れんばかりの大きな拍手が起きた。  俺も、びっくりした。  まるで全国大会決勝戦の、一打逆転の場面でも見てるかのようだ。  ワンちゃんも同じ気分だったのか、ほぼ満員のスタンドをぐるっと見渡して、一瞬呆然と立ち尽くす。  その拍手に後押しされるように深く息を吸い込んで、ようやく一歩を踏み出した。 『皆さん、お聞きになられてますでしょうか? この大歓声。大会初日の第三試合。明峰の門倉君対、西城の成瀬君。四度目の対決です』 『最初の打席こそ併殺打に終わった成瀬君ですが、その後が圧巻です。ツーベースヒットとホームラン。どちらも門倉君の投球を完璧に捉えてます』 『観客だけでなく、我々も非常に楽しみな対決です』  大勢の声援を受けてバッターボックスに向かうワンちゃんには、もうバットを回す力も残ってないみたいだ。  ボックスへ向かう足が、その疲労を物語ってる。  あんな状態で満足にスイングできるのか……怪しい。  それでも、気力を振り絞ってボックスに立ち、門倉に静かな闘志を向けるワンちゃんは、試合を捨ててない。  勝つ事しか、考えてない。  対する門倉も、受けて立つと言わんばかり、プレッシャーをもはねのけてしまい、今は一層強く輝いて見える。  あの輝きは、ワンちゃんが引き出したものだ。  初戦で、これほどまでに集中力をみなぎらせる事は中々できない。それなのに底力をまざまざと見せ付けて、すでに王者の風格を漂わせている。  それは、相手に自分と同等の強さを見出したせいだ。  二塁にランナーを背負い、門倉がセットポジションで牽制する。  恐らく松谷は走らない。もっとも信頼するバッターが打席にいるんだ。そのバットに賭けるのは当然の選択。  初球、今まで以上に力強い音が、ミットに響いた。  見事にコントロールされた球が、インコース膝下一杯に決まる。  皮肉だ。  これまでの門倉の不安定な投球が、ホントに常勝のプレッシャーによるものだったとしたら、ワンちゃんが打席に立った事で、それが強敵への闘争心に変化しちまった。  二球目、ストライクならワンちゃんが圧倒的に不利になる。  足が上がり、手からボールが離れる。  門倉に迷いはない。ワンちゃんを力でねじ伏せ、三振させる事しか考えてない。  門倉の重く威力のある球を、ワンちゃんもまたコースを見極め、ことごとくカットする。  三球目。  四球目。  五球目。  鈍い音が球場に響くたび、歓声とどよめきが起きる。  そしてレフトスタンドからは、西城の学生の『北斗』コールが、どんどん大きくなっていく。  背を向けるワンちゃんにも、きっとはっきり聞こえてる。  頑張れ、ワンちゃん!  もう、投げなくていい。  だからあと一球、ワンちゃんに力を……  せめて、バットを振り切るだけのパワーを。  それで、きっと全てに……決着が着く。  そう願い祈った視線の先で、ワンちゃんのバットがボールを真芯に捉えた。  久々に響いた快音。  残された力の全てを、その一打に賭けて振り切った。  痛烈な当たりとなった打球が、ファーストとセカンドの中間を抜けて行く!  明らかにペースを落としながらも、ワンちゃんが一塁を蹴り、二塁を狙う!  松谷がホームを突くと信じ、その隙に少しでも自分達を有利にする為に。  こんな時でも、ワンちゃんはやっぱワンちゃんだった。  松谷も当然、、その期待に応えるべく走る。  相棒の疲労を誰よりも感じ取っているから、強引だとわかっていてもホームを突く。  いや…もしかしたら、もうマウンドに上がるワンちゃんを見たくないから、かもしれない。  やり場のなかった憤りをぶつけるように松谷が頭から本塁に突っ込み、同じく返球を受けたキャッチャーとホームベース上で激しくぶつかった。  ミットに収まったボールは――こぼれなかった。  ホームを死守したキャッチャーが左手のミットを高く掲げ、アピールする。  主審の判定は―――  固唾を呑んで見守る。  この試合の中だけでも、もう何度も経験した、息詰まる一瞬。  大きく繰り返されたそのジェスチャーを、画面越しに見守った。 『ランナーアウトッ! アウトです! 西城の松谷君、その俊足も一歩及ばず、昨年度優勝校の明峰が初戦かろうじて逃げ切り、長い長い激闘、白熱した試合にようやく終止符を打ちましたっ!』  ジャッジが下された瞬間、球場全体の時が止まった。  すぐに爆発的な歓声がライトスタンドで起こり、守備に散っていた明峰のレギュラーが一斉に門倉の元に集う。  夕暮れのスタジアムに、勝ち鬨の雄叫びが高々と響いた。
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