2人が本棚に入れています
本棚に追加
***
お腹が弱い私は、しょっちゅうトイレに籠もる羽目になる。塾に行ったその日もまさにそうだった。夏の方が冬よりも駄目なのだ。理由は単純明快、冷房で冷やされるからである。そして悲しいかな、長くトイレに籠もりすぎてうっかり電気を消されてしまうなんてこともしばしばあり、この日もまさにそれだったのである。
「あ、ちょっと!」
その日最悪だったのは、自動点灯のトイレの電気のみならず、廊下の電気まで消されてしまったっぽいことである。お陰で、私は一瞬真っ暗なトイレに取り残される羽目になってしまった。急いで用を済ませて手を洗って外に出ると、再びトイレの電気はついたものの、塾の廊下は電気が消されて真っ暗の状態である。
私はお世辞にも、暗闇やおばけが得意な方の質ではない。警備員か職員か知らないが、消すなら生徒が残ってないか確認してからにしてくれないだろうか。私が心の中でぶつぶつと文句を言っていると。
「あれ?」
真っ暗闇の中。男子トイレの前で、何かが光っているのが見えたのである。それは、文字だった。どうやら誰かのノートらしい。光るペンで書いてあったせいで、そのタイトルだけが光って見えたのだ。
まさか、と思って拾い上げた私は気づいてしまった。光るペンで書かれたタイトルは、“レンアイノート”。そして、その裏表紙に書かれている名前をトイレの明かりで照らして確認してみると――。
――こ、こ、これ!これ!よりにもよって、タケミ君のノートだぁぁ!?
私はその場で、ひっくり返りそうになったのである。
最初のコメントを投稿しよう!