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わんこ家族
苦しむ妻の手を握った。生命の誕生というのはこんなに苦しいものなのか。
妻が一際大きな声を上げた。
そして助産師が新しい命を抱き上げ、私はその子を抱いた。まるで天使のような命を眺めていると、助産師が声をかけてきた。
はい、どんどん♪
かけ声にあわせて、もう一人の赤ん坊をとりあげ、二人目の子供を私の胸に抱かせた。
はい、じゃんじゃん♪
更にもう一人の赤ちゃんを取り上げ、私の手の中へ滑り込ませた。
はい、どんどん♪
はい、じゃんじゃん♪
看護婦はリズムに合わせて、10人、20人と赤ん坊を取り上げた。気がつけば私は50人近くの赤ん坊を抱いていた。
「こ、これ以上は」
「まだ全然いけるわよ」
病室の壁には、百人以上の赤ちゃんをバランスよく抱えた男性の写真が飾ってあった。
…まだ、いけるのか?
そんな心の隙を見抜かれたのか、助産師が続けた。
はい、どんどん♪
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