仮定の医学

咳が止まらない

ケホッ！

咳をすると節々が痛む。どうやら風邪をひいてしまったようだ。

病院にいくと先生は言った。
「咳替えをしましょう」
箱からクジを引くと【ゴホッ】が出てきた。しばらく様子をみましょう、と家に帰された。

ゴホッ！

咳は出続けた。家が油絵のように歪み、庭にひまわりが咲き始めた。幻覚だ。再び医者に行った。

「咳替えは季節毎なので、咳が嫌なんてワガママは…」
しかし強引に咳替えを要求した。箱からは【アホッ】が出てきた。

アホッ！
朝五時までパワーシャベルに乗った猫が豆を永遠に掘り続けるアホな悪夢にうなされた。

咳替え！【イボッ】
体中イボだらけに。

咳替え！【ロボッ】
鼻からオイル汁が漏れ始めた。

咳替え！【ツボッ】
あー気持ちいいい……いてててて！

咳替え！【　】
クジは白紙だった。よし、これで完治！

「君の咳は無くなったよ」
先生は私の前に花瓶を置いた。