仮定の医学

夫よ

夫は入院して最期の時を待っている。

早く、早くして。
貴方の体を触媒にして、星は生まれ変わる。
私は予定表を取り出して、２月14日に丸をつけた。

貴方の命が終わる時、その体が爆発の特異点になる。この地球を中心としたビッグバンを発生させ、私達の星を新しい宇宙に空間異動させるの。もう今の宇宙はダメ。私達の星はこのままでは滅ぶ。

夫よ。
早く、早く。

入院中の夫から連絡があった。病気は完全治癒し、退院すると。

予定表の丸印を再確認した。この日までに星を異動させなければ、星は滅ぶ。

夫が病室に戻ってきて、私を強く抱きしめた。何かに謝っているようだがショックで聞こえてこない。

ビッグバン予定日、私は毒入りチョコを夫にプレゼントした。夫は今までの自分を懺悔するために、それは貰えないと拒否した。

私の愛は届かないと嘆いていると、夫は私に優しくキスをした。

違うの、違う。

死んで。