その4 ナーやんとこねこねこねこ

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 牛乳、卵、ホイップクリーム、ホッケの切り身。  ()()の、切り()。 「ナーやん……これ」 「ホケミ」 「ホッケだよな」 「いや、わからんちゃ。間違えた俺も悪かったかもしれんけんど、ちゃんとホットケーキ作るっちゆわんお前にも過失はあるよな」  悪びれもせずに笑う和睦は、テーブルでノートを広げて何かに集中している檸檬の前に腰を下ろすと、こねこねこねこの封を切った。可愛らしい仔猫の絵が目印の、ベストセラー商品だ。程よくこねると、猫の肉球の感触に近づく。 「ホッケで今の檸檬さんの気を引けるとは思えない……だけどナーやんに折角買ってきてもらった食材を無駄にするわけにも……」  譲がぶつぶつと悩み始めたので、さすがに和睦も悪い気になってきた。 「譲ぅ。ごめんな。俺の出来ることなら手伝うけ言うちょくれ」 「いやいい……」 「怒んなちゃ」 「怒ってない。ナーやんはこねこでもこねてろ」 「……そうかあ」  実際、和睦が料理の役に立つとも思えなかったので、こねこねこねこをこね始める。薄ピンク色の知育菓子が周囲に香ばしい香りを撒き散らす。猫の肉球の匂い、などというコンセプトらしい。 「このこねる感じがたまらんのやちゃな。なあ、リモネンもやってみるか?」 「……今……僕は忙しいんだよ」 「――檸檬さん?!」
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