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「あとはケチャップくらいあるかな?」
「ないなあ」
「そんなこともあろうかと、あらかじめ用意した小分けのケチャップがここにあります! そしてこれからナーやんの心を読むから、それ文字にするね」
「はあ?」
匠が至極真面目な顔をしながら、お弁当に入れるような小さなケチャップでオムライスに文字を書いた。それを見た和睦は、思わず苦笑する。
「――俺の心ぉ、読んだんか?」
「当たった? ねえ当たった?」
オムライスには『アイシテル!』と書かれていた。
曖昧な関係をなんとかしたい、というのが伝わったのだろうか。あまりにストレートな言葉に、なんともそわそわする。
「俺は愛しちょるなんっちゆわん。せいぜい……好いちょるちゃ」
「やっと言ってくれたよぉ……」
「いや、うん。まあそういうことにしようか」
突然の急展開にどうしたら良いのかわからなくなったが、匠が非常に喜んでいるようだったので、まあいいかと思い直した。
どうして和睦を尊重してくれるのか、思考を推理することが出来るのか、よくわからなかったけれど。それを言ったら匠は呆れたように呟いた。
「ナーやんをそれだけ見てるってことだよ」
狭小キッチンとお別れするのも、時間の問題かも知れなかった。
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