その4 ナーやんとこねこねこねこ

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 反応があったので、キッチンでホッケを前に悩んでいた譲が振り向いた。 「なんで俺が話しかけても無言だったのに、ナーやんに反応を……」  何やらショックを受けている譲に、和睦が軽口を叩く。 「譲なんかやらかしたのか? 浮気でもしたんじゃないか」 「するか!」 「あとは……乱暴にせんじゃったか? 付き合うて長うなると、雑になることがあるっち聞くし」 「雑……そんな馬鹿な。――いや、俺が気づいてないだけで、檸檬さんは不満だったとか……ナーやん、俺はどうしたら……」 「知るか。ほら、程よう仔猫ちゃんの肉球が再現されたちゃ。これでも食うて落ち着きな」  すっかり再現したこねこねこねこの完成形を譲に差し出そうとした和睦の手を、何かに集中してきた檸檬が遮った。 「リモネン?」 「……それ、触りたい」 「どうぞ」 「落ち着く……ナーやん、ありがとう」  急に礼を言われて、和睦もよくわからずに目をぱちくりさせた。譲の顔が悲嘆に暮れているのにも気づかず、檸檬はこねこねこねこのぷにぷにとした感触を楽しんでいた。 「はー……」  檸檬から深いため息が漏れた。それから急にぱたりとテーブルに突っ伏し、すやすやと眠り始めたので譲も和睦もなんのことやらわからずに顔を見合わせた。 「このしとは一体何に集中しちょったんや?」 「いや……なんか仕事のアイデアに詰まってたらしくて」
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